◆◆改正労働基準法が平成22年4月から施行されます。◆◆
施行まであと3か月を切りました。対応が遅れている企業の人事総務担当の方は、ご確認をお急ぎ下さい。
改正の概要は以下の3点です。
【改正のポイント】
1.「時間外労働の限度に関する基準」の見直し
・「時間外労働の限度に関する基準」が改正され、労使当事者は限度時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を引き上げるよう努めることとされます。
2.法定割増賃金率の引上げ
・月60時間を超える法定時間外時間に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
・引き上げ分の割増賃金の代わりに有給休暇を付与する制度(代替休暇)を設けることができます。
・ただし、中小企業には当分の間適用が猶予されます。
3.年次有給休暇の時間単位付与
・労使協定により年次有給休暇を時間単位で付与することができるようになります。
上の3点の中で、中小企業が対応を要求されるのは、1の「時間外労働の限度に関する基準」の見直しと、3の年次有給休暇の時間単位付与の2点です。
特にこの2点について、その内容を詳しく確認してみましょう。
◆ 1.「時間外労働の限度に関する基準」の見直し ◆
労働基準法で、労働時間は1週40時間、1日8時間までと定められています。
これを超えて時間外労働を行わせるためには、労使で「36協定(サブロク協定)」を締結する必要があります。
36協定では、労働時間を延長する時間(=限度時間)を労使で協定しなければなりません。
しかし、36協定を結んでいても、例えば、突然の納期のひっ迫や、機械トラブルなど、突発的かつ特別な事情が生じた際には、36協定で定めた限度時間を超えて時間外労働をせざるを得ない事態も起こります。
そのような「臨時的かつ特別の事情」が生じることが予想される場合には、「特別条項」を付せば、限度時間を超えて時間外労働をすることができます。
特別条項では、臨時的かつ特別の事情がある場合には、限度時間を超える一定の時間・回数まで、時間外労働を延長するといった内容を定めます。
このたび、このような特別条項付き36協定について、①~③の改正がなされました。
① 限度時間を超えて働かせる一定の時間(1日を超え3か月以内の期間、1時間)ごとに割増賃金率を定めること
② ①の率を法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めること
③ そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること
ここで注目されるのは、②及び③の改正内容が、努力義務である点です。
さらに、中小企業は、今回の法定割増賃金率の引き上げに関する改正の適用が猶予されているため、②③についても努力義務とされています。
従って、今回の改正においては、まずもって①について対応をすれば、法的な義務を果たしたことになります。②を法定割増賃金率のまま据え置いたとしても、法的には違法ではないのです。
ただし、改正の主旨を鑑み、事業主の責務として、時間外労働を短縮するよう努め、限度時間を超えて働かせる時間の割増賃金率を労使の間で協議し、36協定に定める必要はあります。
多くの中小企業では、年度末に36協定の更新がなされています。締結日が平成22年4月1以降になる協定や、締結日が平成22年3月31日以前であっても、提出日が4月以降になるものには今回の改正が適用されます。今後36協定の更新をする場合、または、新たに36協定を協定する場合には、改正点を十分留意下さい。
◆ 2.年次有給休暇の時間単位付与の創設 ◆
このたびの改正より、労使協定を結んだ場合には、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができるようになりました。
この労使協定には、以下の4点を定めなければなりません。
①時間単位年休の対象労働者の範囲
②時間単位年休の日数
③時間単位年休1日の時間数
④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
また、年次有給休暇は就業規則の絶対的記載事項であるため、その適用方法(対象者や賃金額など)を就業規則に定める必要も生じてきます。
年休の時間単位付与制度を選択するか否かについては、それぞれの事業所の事情によりメリット・デメリットがありますが、一般的には、以下のようなものが考えられるのではないでしょうか。
【メリット】
・従業員にとっては、有給休暇を申請しやすくなります。
・従って、会社にとっても、有給休暇を消化しやすくなります。
【デメリット】
・会社とっては、年休の管理が煩雑になりやすいです。
・また、例えば、これまで1時間の遅刻のため半日年休を消化したところを、1時間しか消化できなくなります。
従って、退職時にまとめて消化を要求された場合には、労務費の負担が重くなります。
※豆知識※
年休に関しては、年休による労務費の負担を大きくしないためには、会社の事業計画に合わせた計画的な付与を含め、極力繰り越しをしないように、上手に消化をしていくことが望まれます。従業員のからだと心の健康を守り、ひいては会社の経営発展のためにも上手に活用するよう努めましょう。