日本人が外国企業に雇用される場合や、外国人が日本企業に雇用される場合の国際的労働関係において、重要な論点となるのが、当該雇用契約にどの国の法を適用すべきかという「準拠法」の問題です。この点については、2006年に制定された「法の適用に関する通則法」(以下、「通則法」とします)により、立法的解釈がなされています。
「通則法」によると、契約の成立および効力は、当事者が契約当初に選択した地の法を適用するとし(7条)、選択がないときは、契約当初において、最も密接な関係がある地の法による(8条1項)とされます。これが契約の準拠法の一般原則ですが、労働契約に関しては、雇用契約時に法を適用する地が選択されていないことが多い、立場の強い使用者が法を適用する地を有利に選択してしまうといった恐れがあります。そのため、労働者保護の観点から、通則法の中で特例が設けられています(※)。
特例によると、選択された準拠法が、当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が最も密接な関係がある地の法の中の特定の強行規定を適用する旨を意思表示したときは、当該強行規定が適用されます(12条1項)。例えば、日本で労務を提供する労働者の労働契約について外国の法が選択されていても、労働者は、労務提供地である日本の労働契約法16条の解雇権濫用法理をもとに解雇無効を主張することができるのです。
(※)労働基準法や最低賃金法のような労働者保護を目的とする強行法規は、公法同様、準拠法選択に関わらず適用されます。