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中国・ベトナムへの海外進出と、海外企業の日本進出を支援しています

 

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成和ビジネスコンサルティング新着情報

【国際労務教室】外国企業の日本駐在員事務所と労働基準法の適用
 外国企業の日本進出誘致が進められる中、外国企業が日本にビジネス拠点を設ける初期段階において、駐在員事務所を設置することがあります。本格的な営業活動を行うための準備として、市場調査や情報収集、広告を中心とする活動を行う拠点として設置されます。
 
 外国企業が日本に進出する形態としては、他に支店や子会社(日本法人)の設立の二形態がありますが、これらが登記の手続きを伴うのに対し、駐在員事務所は登記の手続きを経ることなく設置されるものです。法人格のない駐在員事務所については、設置をした外国企業の本社または駐在員事務所の代表者個人が契約当事者とならざるを得ません。
 
 ここで注意すべきは、当該駐在員事務所で勤務する人材の労務上の取扱です。わが国で行われる「事業」には、事業主又は労働者が外国人あるいは外国法人であるかを問わず、原則として、労働基準法が適用されます。「事業」とは、一定の場所において、相関連する組織のもとに業として継続的に行われる活動の一体をいいます。従って、外国法人の本社又は駐在員事務所の代表者が赴任させた人材や雇用した人材に、一定の場所において、指揮監督の下、継続的に業務に従事させる場合、当該駐在員事務所は、労働基準法の適用事業として解されます。
 
 駐在員事務所は、法人格がなく行政の指導を受けにくい状況になりがちですが、労働基準法、労働安全衛生法等の労働法規が適用される点に自ら留意する必要があります。   
 
 参考文献:日本貿易振興機構(ジェトロ)「Laws & Regulations on Setting Up Business in Japan」
 

 

 
【国際労務教室】社会保障協定と厚生年金保険特例加入制度

  海外赴任者が赴任先国と日本の社会保険料を二重に負担すること及び海外赴任者が納付する社会保険料が掛け捨てになることを防止するため「社会保障協定」という制度があります。

 日本が社会保障協定を締結している相手国に海外赴任する場合、同協定の適用申請により、原則として、赴任期間が5年以内の予定である場合は、相手国の社会保険制度への加入を免除され、日本の社会保険のみに加入することができます。一方、5年を超える予定で海外赴任する場合は、日本の社会保険加入が免除され、相手国の社会保険のみに加入することができます。どちらの場合であっても、日本と相手国の年金制度への加入期間を通算し、年金を受給するために最低限必要とされる加入期間を有していれば、両国それぞれの加入期間に応じて計算された年金額を、両国それぞれから受給できるようになります(※1)
 
 従来、両国それぞれの加入期間は通算されますが、それぞれの国の年金額にしか反映されないため、社会保障協定の相手国への海外赴任が長期にわたる場合、日本の年金額を増やせないという弊害が生じ得ました。この弊害を改善すべく、現在は「厚生年金特例加入制度」が全ての社会保障協定の相手国に拡大しています。この特例加入制度を申請することで、相手国の社会保険制度に加入しながら、日本の厚生年金制度にも任意で加入可能となります。
 
 (※1)社会保障協定を締結する相手国の制度に取扱いが異なる場合があります。詳細は、各国と締結している社会保障協定の内容をご確認下さい。             
 
 
【国際労務教室】農業分野における外国人技能実習生の労働条件確保

  農林水産省の公表(※1)によると、2016年に入り初めて自営農家の農業就業人口が200万人を割り、農業者の高齢化が益々進む一方、若手就農者の推進が停滞する実態が浮き彫りになりました。このように担い手不足の課題を抱える農業分野においては、本来の国際貢献と人材育成という制度趣旨とは異なるものの、外国人技能実習生が労働力の一端を担っています。

 農業分野において、外国人技能実習生を受け入れる際に注意すべきことは、労働条件の確保に関する施策です。他産業と比べ通年雇用の常勤労働者の労務管理に不慣れなことが多い農業分野において、最低賃金法に違反する時間外労働手当の支給、時間管理の不徹底による賃金不支給、社会保険制度適用の不整備などの不適切事案が指導される例が見受けられます。
 
 さらに、労働基準法に定める労働時間、休日、休憩に関する規定は、同法第41条第1項により、農業(林業除く)、畜産・水産業において適用除外とされているのに対し、農業分野の外国人技能実習生受入機関を統一的に指導する農林水産省の指導基準(※2)においては、外国人技能実習生制度の趣旨や労使トラブルの未然防止に鑑み、他産業と同様な労働時間管理や割増賃金の支給が求められている点にも注意が必要です。
 
(※1)平成28年農業構造動態調査(平成28年6月28日農林水産省公表)によると、約192万人とされました。 
 
(※2)「農業分野における技能実習生の労働条件の確保について」平成25年3月付、「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」平成12年3月付、農林水産省により各々通知。)
 
 
【国際労務教室】海外出張の移動時間の取扱い

  海外出張においては、移動時間が長時間に及ぶ場合や所定休日に移動日が重なる場合があり、その取扱いについて迷うケースが見受けられます。

 そもそも労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間を示し、労働から離れることを保証される休憩時間を除く時間とされます。

 これに対し、出張時の移動時間については、制約はあるものの、食事や読書、睡眠など、労働者が自由に時間を利用することができるため、使用者の指揮命令下にない状態として解されています。従って、出張の移動時間については、労働の対償としての賃金の支払義務はなく、時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の問題も生じ得ないとされます。
 
 ただし、出張の移動が、物品等を運搬すること自体が目的であり、その監視を命じられている場合や(※)、移動中に上司と打合せを命じられている場合、資料作成を命じられている場合など、実質的には使用者の指揮命令下にあり、労働者の自由利用が保証されていない場合には、出張中の移動時間であっても、労働時間として判断をしなければなりません。
 
 なお、上述のように労働拘束性が低い場合には、出張の移動時間を労働時間として取り扱わくてよいとされますが、そうであっても、特に海外出張の場合は、長時間移動や時差の影響に起因する労働者の精神的身体的疲労に関し、使用者が安全配慮の義務を有することは言うまでもありません。
(※)参考通達 昭23.3.17基発461、昭33.2.13基発90
 
 
【国際労務教室】 海外勤務者の労災保険に関する東京高裁判決

  海外勤務中に死亡した男性の遺族が、海外勤務を理由に労災保険の適用除外とされた処分を不服とし、遺族補償給付を求めた訴訟の控訴審判決において、東京高裁が本年4月27日に不支給とした処分を取り消したことが多数報道されました。                        

 国内法である労災保険法は、原則として国内事業場で勤務する労働者に適用されます。そのため、労働者が海外の事業場に派遣され、国内の労災保険が適用されない状況下で、派遣先国の災害補償制度を適用されたとしても、給付内容が不十分で不利益を被る場合あります。
 
 そこで、そのような海外の事業場に派遣される人を救済するために設けられたのが、海外派遣者の特別加入制度です。海外の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者またはその事業場の使用者は、所定の特別加入の手続きを行った場合に限り、国内の労災保険により給付を得ることができます。それに比べ、国内の事業場に所属し指揮命令に従って勤務する海外出張者は、労働の場が海外にあるに過ぎないとして、何らの手続きを行うことなく、国内の労災保険の給付の対象となります。
 
 上述の判決は、海外の事業場に所属し代表まで務めていた男性について、労働基準監督署が特別加入の手続きを経ていない海外派遣者として給付を不支給とした判断を、職務内容・指揮命令・勤怠管理等により、実質的には国内の事業場に所属していた海外出張者であると、実態で判断し不支給処分を覆した点が注目されます。