海外赴任者の基本給の設定方式については、大きく分けて「購買力補償方式」「別建て方式」「併用方式」の3つがあると言われます。
「購買力補償方式」は、国内勤務時の給与から税金や社会保険料等を差し引き、赴任先都市の生計費指数等を乗じることにより算出する方式です。日本における購買力を維持し、赴任先での生活に支障のない額を設定します。この方式は、為替変動や物価変動への対応もしやすく、広く利用されています(※1)。
「別建て方式」は、国内勤務時の給与とは別に、赴任先国の職務・職責等に応じて会社が独自に設定する方式です。同方式は、最近は採用されることが少なくなっており(※2)、中小企業においては、この二つの方式の折衷案とも言える「併用方式」が多く利用されています(※3)。併用方式においては、国内勤務時の給与の全額あるいは一定割合の給与と、赴任先国の生活に必要な給与(家族帯同手当や海外勤務手当等)を支給する方式です。導入時に設定しやすい反面、為替変動や物価の変動に対応しにくいというデメリットがあります。
海外赴任者の給与支給については、これらの方式を検討すると共に、赴任先国における税金や社会保険料の納付額を考慮するため、まず「手取額」を設定し、税金や社会保険料を逆算して総額を計算する方法(グロスアップ計算といいます)により具体的に決定します。
(※1~3)一般財団法人労務行政研究所の調査「2014年海外赴任者の処遇」(「労政時報」第3879号)によると、各方式ごとに採用割合は、購買力補償方式が58.7%、併用方式が31.2%、別建方式は10.1%となっています。