外国人就業者の社会保険料徴収義務に関しては、北京市で説明会が開かれたのを契機に、各地方政府の動向に注目が集まっています。日中の社会保障協定発効までには数年を要すことが予想されるため、本社の人事担当者としては、赴任者が中国で社会保険に加入することを前提に、労務費増額に関する情報はもとより、現地の社会保険制度に関する情報も収集しておきたいところです。
中国の社会保険には年金・医療・労災・失業・生育の5つの制度がありますが、その中でも赴任者にとって、すぐさま身近なものになるのが医療保険です。
現状、中国赴任者の多くは、日系の医療機関で会社負担の海外旅行保険を利用し、キャッシュレスで診療を受けています。そのため、現実的には、赴任者がローカルの医療機関を活用することはあまり考えられませんが、中国で公的医療保険を利用することが可能になることを視野におくと、①日中の医療保険料の二重払い分全額を会社負担とするのか、②海外旅行保険の内容の見直しをすべきか、といった検討課題が浮上します。②に関しては、日中の労災保険給付の内容を把握した上で検討すべき課題でもあります。
なお、「社会保険法」により適用が拡大されたのは、「外国人就業者」であり、同法には日本のような「被扶養者」の概念がないため、非就業の帯同家族への適用は予定されていません。海外旅行保険の見直しを検討する際には、加入対象者について注意が必要です。