新年度を迎え、海外勤務者の新規派遣や交替を済ませた企業が多いのではないでしょうか。海外勤務を含む人事異動は、社員の就労環境の大きな変化を伴うため、国内人事異動に比べ、より慎重な対応を要します。この機会に海外勤務を含む人事異動が適切に行われているか確認してみましょう。海外勤務者の中でも事例の多い在籍出向の場合について記載します。
海外在籍出向の場合、出向者は日本本社(出向元会社)との労働契約を継続し、籍を置いたまま、海外の出向先会社(現地法人等)とも労働契約を締結し、その指揮命令の下に出向先会社の業務に従事します。出向者にとっては、重大な労働条件の変更です。
国内出向命令については、社員の個別的同意が必要とする説と、就業規則の明規や採用時の同意などによる包括的同意が得られていればよいとする説の二説があります。
しかし、海外の別会社への在籍出向については、著しい労働条件の変更を伴うことや、生活環境の変化により社員が被る不利益の度合いが大きいことを鑑み、以下のような諸規定の整備をすると共に、社員の個別的同意を得ることが望ましいといえます。
①出向辞令・出向通知書・・・極力早い段階で出向辞令により海外在籍出向を命じ、出向期間中の労働条件を出向通知書により通知します。賃金・勤務時間・休日等の処遇に関する事項が重要です。
②海外勤務者規程・・・海外勤務者の処遇に関する共通ルールをまとめることで人事担当者の負担が軽減されます。また海外勤務前に提示することで、赴任者に安心感を与えることができます。