海外出張者に支払う出張日当(※1)について、支給目的の確認に曖昧さを残したまま実務的対応を行っている場合が見受けられます。
労務の観点において「賃金」とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うもの全てとされます。従って、企業が業務遂行のために負担する業務費の性格を有す出張旅費は、賃金ではありません。それに対し、賃金性の有無の判断が分かれるのが出張日当です。「日当」とは、一般的に交通費や宿泊料以外の出張に要する少額の諸雑務に対するみなしの実費弁償として支給される手当をいいます。日当のうち「通常必要と認められるもの(※2)」については、所得税が課税されないとされます(※3)。
しかし、企業によっては、移動による疲労に対する慰労や時間外割増賃金の補填などの意味を含め、出張日当を支払う場合があります。このような場合、移動距離や移動時間が長くなる海外出張に対する出張日当は、高くなる傾向が見受けられます。
自社の出張日当の支給目的が、このように賃金性の濃いものである場合は、一種の特殊作業手当とともみられる労働基準法上の賃金に該当するのではないか再検証すべきです。出張日当が賃金に該当すれば、労働保険料・社会保険料の基礎となり、また、上述の非課税とされる旅費に該当しなければ、給与所得として課税される点に留意する必要があります。
(※1) 出張手当、出張費等、企業により呼称は様々です。(※2)所基通9-3に判断基準が示されています。(※3)所法9①四