海外赴任者に対し企業が行う支援は、赴任前・赴任中・赴任後の3つに分かれます。この内、企業が費用と時間をかけ、最も手厚く行うものが、赴任前の支援です。海外赴任前研修などと呼ばれ、語学や現地事情、法務等のカリキュラムで構成されるものが多く見られます。
これに対し、企業の支援が最も手薄になるが、赴任者の帰任に関するサポートです。もともと勤務していた母国の事業所への帰任は、企業側からは軽視されがちですが、赴任者にとっては日本の職場環境に再度適応する「再適応」の過程です。この再適応の苦労を企業側が理解していないと、赴任者が会社からの支援を得られないストレスを感じたり、ひいては会社に対する不信感を抱き、再適応できずに離職してしまう不幸なケースにもつながります。
海外のビジネス習慣に適応できていた赴任者ほど、日本のビジネス習慣に馴染む再適応が難しくなる傾向が見られます。長期赴任から帰任する場合には、本社の人事配置や業務過程などが変化しており、現場に馴染みフル稼働できるまでには時間を要します。また、帰任後、意図しない海外業務と無関係の業務に就かせることも、帰任者に、海外で苦労して経験してきたことが無駄になるような徒労感を与えるものです。
帰任者を受け入れる企業側としては、このような再適応の苦労を理解すると共に、海外赴任中の経験がキャリア形成や処遇においてどのように役立つのかが見える組織づくりをすること、さらには、帰任後にはどのように働いてほしいかをメッセージとして伝えることが、帰任者の円滑な再適応を促し、その後の活躍に繋げる重要な帰任サポートと言えます。