海外赴任者の帰任手続きについては、不慣れな場合、後追い的な対応になりがちです。赴任者の帰任時に会社が行うべき労務管理・社会保険に関する対応について確認してみましょう。
まず、労務管理の観点から、多くの場合在籍出向をしている赴任者に対する出向命令を解くため、帰任命令を発令します。出向命令の解除は、労働者の地位に大きな影響を及ぼすものです。帰任命令と同時に帰任後の労働条件(配属先、賃金、勤務時間、休憩時間等)を示すことが求められます。また、海外赴任時と同様、帰国時にも海外赴任者の健康診断を実施することが安全衛生法により事業主に義務付けられています。
社会保険の手続きとしては、「介護保険適用除外等該当届」を提出していた場合は、「介護保険適用除外等非該当届」を提出し、介護保険料の控除を開始します。「被保険者住所変更届」を提出していた場合にも、帰国後の国内住所に変更する手続きを要します。労災保険については、「海外派遣者の特別加入変更届」の提出が必要です。特別加入労災保険と国内労働者の労災保険とでは、保険料率が異なり、納付すべき労働保険料の額に影響があります。
当然のことながら、これらのほかに、帰任後の税務上の取扱い(源泉徴収事務、確定申告を行う必要性の確認、住宅ローン控除再適用に関する手続き等)にも注意を払う必要があります。さらに、帰任者自身で行うべき転入手続き、印鑑証明の再登録などの市町村における手続きについても、帰国前に会社が情報提供を行うことが、帰任者への国内再適応の支援に繋がります。