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【国際労務教室】海外出向者の長時間労働・過重労働
 労働者の長時間労働及び過重労働に対する行政の重点監督が推進される中、長時間労働抑制が企業の経営課題の一つと言えます。このような情勢の中、置き去りにされがちな海外出向者の労働時間管理の在り方についても再確認する必要があります。
 
 海外出向者については、海外出向者自身が現地法人の責任者であり管理職として認識されており労働時間管理がされていない、あるいは、労働時間管理が現地法人の上司に一任され国内の人事部門の管理がなされないといった事情から、不適正な労働時間管理の下、恒常的な長時間労働が行われていることがあります。
 
 しかしながら、海外出向者と出向元国内企業は在籍出向契約により労働契約を継続しており、社命により労働者を現地法人等に送り出した国内出向元企業には、労働者に対する安全配慮義務が課せられていると解されています。この安全配慮義務を怠った場合、民事上の責任を追及され多額の損害賠償を求められる訴訟に発展することもあります。     
                        
 海外出向者の労働時間を適正に把握し、長時間労働や過重労働を是正するためには、国内出向元企業が現地法人等から勤怠関連の情報収集を行う必要があります。時間外労働時間はもちろん、長時間移動を伴う出張の頻度、拘束時間の多い業務環境など、身体的負担の多い要因を把握し是正方法を出向元と出向先が共同で検討することが大切です。
       
 情報通信の手段が発達した昨今、「海外勤務であるため把握ができなかった」では済まされない場合があり得るという意識が求められます。 
 
(※) 昭和25年8月24日基発776号。