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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 外国税額の期末処理(税額控除と損金算入)

 わが国では、外国法人税の二重課税の排除措置として、税額控除方式と損金算入方式の選択制が採用されています。したがって、内国法人は申告に際して、納付した外国税額について、いずれかの方式の選択が必要となります。この場合、どちらが有利となるのでしょうか。

 理論的には、税額控除方式の場合には、納付税額が外国税額の分減少するのに対して、損金算入方式の場合には、外国税額に日本の適用税率を乗じた分しか減少しないことから、税額控除方式が有利といえます。しかし、実際、税額控除方式の適用においては、外国税額の全額が無条件に控除対象となるわけではなく、一定の限度額計算を行うことにより控除対象とならない外国税額(※1)が生じる場合があること、限度額を超過する税額は3年間に限り繰り越すことになりますが、3年を超える場合には切り捨てとなることもあり、損金算入方式の選択が有利となるケースもあることから、両制度の選択には慎重な検討が必要となります。

 税額控除方式と損金算入方式は事業年度ごと選択することが可能ですが、損金算入方式を選択する場合、前3年より繰り越している控除限度超過額(及び控除余裕額)が切り捨てられる(※2)ことや、実務上、税額控除と損金算入の選択は、当該事業年度の外国税額すべてにおいて一括して選択する必要があり、部分的な選択(併用)はできない(※3)ことに留意が必要です。

(※1)外国税額控除の対象とならないものを除き、当該外国税額は損金不算入となります。(※2)法人税施行令第144条第2項、第145条第2項(※3)法人税基本通達16-3-1

 
 
役員社宅賃貸料計算上の固定資産税課税標準額について

 役員に対して社宅を通常よりも低い家賃等で貸与したことによる経済的利益(社宅の賃貸料相当額と実際に徴収している賃貸料との差額)は、その役員に係る給与課税の対象とされる。一方で、役員から月額の通常の賃貸料の額(賃貸料相当額)を徴収していれば、経済的利益はないものとして給与課税の対象外となる。ここでいう賃貸料相当額とは、豪華社宅を除き、貸与する社宅の床面積等に応じて以下の通り計算される。①自社所有社宅(小規模住宅等以外の住宅)・・・(家屋の固定資産税課税標準額×12%又は10%+敷地の固定資産税課税標準額×6%)×1/12 ②借上社宅・・・企業が払う賃貸料の額の50%相当額 と 上記①の算式の額のいずれか多い金額 ③小規模住宅等(床面積132㎡以下(木造家屋以外の家屋については床面積99㎡以下)である住宅)・・・家屋の固定資産税課税標準額×0.2%+12円×当該家屋の総床面積(㎡)/3.3㎡+敷地の固定資産税課税標準額×0.22%

 ここで問題となるのが、敷地(土地)の固定資産税課税標準額の解釈である。地方税法上、土地のうち、住宅用地については、面積に応じて課税標準額を6分の1又は3分の1に軽減する「住宅用地特例」が設けられており、固定資産課税台帳には、「基準年度の価格(住宅用地特例の適用前の価額)」と「住宅用地特例の適用後の価額」のいずれも登録されている。上記役員社宅の賃貸料相当額の計算における敷地(土地)の固定資産税課税標準額は「住宅用地特例の適用後の価額」を使うことで問題ないようである。

 
 
【国際税務教室】 外貨建取引と外貨建資産等の為替換算

  法人が海外取引を行う場合、外国の通貨建による取引(以下、「外貨建取引」とします)を行うことも多く、その様な場合、外国通貨や外国通貨建の債権債務、有価証券など(以下、「外貨建資産等」とします)を所有します。税務上、外貨建取引や外貨建資産等は円貨への換算が必要となりますが、その場合どのようなタイミングで換算するのでしょうか。

 法人税法上、外貨建取引の換算は、原則としてその取引を行ったときの外国為替の売買相場によるものとされています(法法61の8 ①)。その上で、期末に外貨建資産等を所有している場合には、資産等の種類によっては、再度、為替換算を行う必要が生じることもあることから注意が必要です。具体的に見れば以下の通りです。

 外貨建資産等の換算は、取得時(又は発生時)の為替相場で換算する「発生時換算法」と、期末時の為替相場で換算する「期末時換算法」の二つの方法があります。これらについては、外貨建資産等の区分に応じて選定をすることになりますが、選定を行わない場合には、法定される換算方法によるものとされます(法法61の9 ①)。例えば、外貨建金銭債権債務における法定される換算方法についてみれば、長期債権債務の場合には発生時換算とされているのに対して、短期債権債務については期末時換算とされています。期末時換算法の場合、決算に際して、期末時のレートで再度、為替換算が必要となります。為替相場が大きく変動する中では、外貨建資産等の区分ごとに正しく換算されているかについて、確認することが求められます。

 
 
事業専従者等が定額減税調整給付対象となる場合の注意点

 定額減税では、配偶者を含めた扶養親族等については、納税者本人の減税額に加算されることで、定額減税の恩恵を受けることができる。しかし、扶養親族等の範囲から青色申告者の事業専従者又は白色申告者の事業専従者は除かれる。そのため青色事業専従者等は納税者本人として定額減税の適用を受けることが必要となるが、青色事業専従者等の給与等の金額は少ないケースが多く、定額減税の恩恵が受けられないのではと疑問視されていたが、これらの者について、令和7年の調整給付の対象とすることになった。 定額減税では、令和6年分の所得税額から減税しきれない金額があると見込まれる者に対して、自治体から書類が届き、書類を返送等することで、その減税しきれない金額相当額の給付金を受けられる(当初給付)。当初給付の金額は、自治体が対象者の令和5年分の所得等を基に、令和6年分の所得税額を推計し算定するため、実際の令和6年分の所得税額や定額減税額が確定後に、当初給付額の金額に差額が生じることがある。そのため、当初給付の金額に不足が生じる場合には、令和7年に不足する金額相当額が給付される予定である(不足額給付Ⅰ)。さらに、①所得税及び個人住民税所得割の税額が0円、②同一生計配偶者や扶養親族に該当しない、③低所得世帯向け給付の対象外、のいずれの要件も満たす場合、つまり定額減税及び低所得世帯向け給付の双方の恩恵を受けられない青色事業専従者等も不足額給付の対象となった(不足額給付Ⅱ)。不足額給付Ⅰでは自治体から書類が届き返送等で給付が受けられるが、不足額給付Ⅱでは基本的に自治体に必要書類を提出し個別申請が必要となり注意が必要である。

 
【国際税務教室】インド法人への人的役務提供対価の支払い 

  経済発展を背景としてインド法人との取引も散見されます。インド法人との取引に際しては、税務上注意を払う点があります。

 日印租税条約によれば、「技術上の役務に対する料金」(※1)(以下、「当該役務提供対価」とします)も使用料と同様に扱われます。そして、当該役務提供対価に対する課税は、役務を提供する側の国だけではなく、所得が生じる国においても課税できるとした上で、所得が生じる場所については「支払者の居住地国」としています(※2)。すなわち、所得の源泉地について「債務者基準」を採用しています。

 他方、日本の国内法(※3)では、当該役務提供対価の源泉は役務の提供地にあるとする役務提供地基準が採用されています。このように、ソースルール(所得の源泉地を定める法規則)が租税条約と国内法により異なることがあります。そのような場合、所得税法162条及び法人税法139条が、国内源泉所得につき「租税条約において国内法の規定と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる」と規定(源泉置換)していることから、国内法のソースルールが租税条約のソースルールに置き換わることにより課税されることになります。すなわち、日本の居住者がインド法人に当該役務提供対価を支払う場合には、役務の提供がインド国内で行われているとしても、国内源泉所得として源泉徴収が必要となることから注意が必要です。

(※1)技術者その他の人員によって提供される役務を含む経済的もしくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務の対価としてのすべての支払金(※2)日印租税条約12条1項、2項、6項(※3)所法161条6項、法法138条4項