このページではJavaScriptを使用しています。

国内・国際税務、農業の会計・税務コンサルティングを行う税理士法人 成和。

 

HOME > 税理士法人 成和新着情報

  • 成和グループ各社
  • 税理士法人 成和
  • 成和ビジネスコンサルティング
  • 上海成和ビジネスコンサルティング
  • ベトナム成和ビジネスマネジメント

税理士法人 成和新着情報

所得税と消費税との違い(通勤手当について)

  一般的に通勤手当は給与課税されないものと思われがちですが、給与として課税される場合もあります。

 所得税では、通勤手当について所得税法9条五で「…その通勤に必要な交通機関の利用…のために支出する費用…のうち…通常必要であると認められる部分(所得税法施行令20条の2に基準が示されている。)」は非課税(給与課税されない)と規定されているので、これを超える通勤手当は「給与」として課税(源泉徴収)されることになります。

 ところで経理担当者は、この通勤手当について消費税の可否判断をする際に「所得税法上非課税とされる部分は課税仕入で、超えた部分は給与なので不課税かな?」と判断しがちであるが、消費税法基本通達11-2-2では「…通勤者…に支給する通勤手当…のうち…通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用…のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められる部分の金額」は課税仕入れに該当するとされていることから、所得税の規定にかかわらず、その通勤手当が通勤者の通勤費用に充てられるものとした場合に、その通勤手当の額が通常必要なものであるときは、課税仕入れに該当することになります。

 通常、通勤手当を支給する場合、会社ごとに定められた基準により支給されますが、その基準による支給額が「通常必要」であるかどうかの精査をし、その結果「必要」であると判断されれば、所得税の規定にかかわらず、消費税では課税取引となることに留意が必要です。

 
 
【国際税務教室】 外国株式や外国公社債の譲渡における為替差損益

  歴史的とされる円安を背景に、外貨建て資産の譲渡が多くみられます。外貨預金を解約して円で払い出すといった取引が代表例といえます。その場合、所得税法の適用において、預入時と解約時の為替レートによる円換算額の差額(以下、「為替差損益」とします)は、実務上、雑所得として取り扱われていることが一般的です(※1)。他方、外国株式や外国公社債などの外貨建資産の譲渡を行う場合は、どのように取り扱われるのでしょうか。これらを譲渡した場合には、①資産そのものの譲渡損益と、②当該資産の取得時と譲渡時の為替差損益の二つの損益が認識できます。所得税法上、②は①と区別して雑所得として認識する必要があるのでしょうか。

 所得金額の計算は、円貨で行うことが前提とされていることから、所得税法においては、外国通貨で支払いが行われる資産の販売及び購入等を外貨建取引とし、居住者が外貨建取引を行った場合には、外貨建取引を行ったときにおける外国為替の売買相場により換算した金額により所得計算をするとされています(※2)。したがって、外国株式や外国公社債を譲渡した場合の所得計算は、取引を行った時点の外国為替売買相場により円換算を行った上で行うことになります。これにより、資産の取得時と譲渡時の為替差損益は、譲渡所得に含まれることになります(※3)。すなわち、所得税法上、外国株式や外国公社債の譲渡を行った場合には、①譲渡損益と②為替差損益を区別して認識する必要はありません。

(※1)譲渡所得に該当するという意見もあります。(※2)所法57の3条1項 (※3)申告分離課税(20.315%)となります。

 
 
最近話題の「300万円問題」って、どういう問題でしょうか

  2022年(令和4年分)の確定申告から、副業収入が300万円以下だと大増税になる可能性があり、これが「300万円問題」といわれるものです。

 この改正には紆余曲折があり、当初は副業の収入が300万円以下である場合は、事業所得ではなく雑所得とする、というものであったが、この改正案に対し「国が推奨する働き方改革の推進に逆行する」など7,000を超える反対意見が出され、最終的に①記帳および帳簿書類の保存があるかどうか(必須要件)、②副業の収入が300万円を超えること、の2つの要件を満たす場合に、その副業が事業所得とされることになりました(※1)

 この改正により、これまでは副業を事業所得として申告していた場合であっても、今後は雑所得と判断されるケースが多くなるものと考えられます。これによる大きな影響は、(イ)副業で損失が生じても他の所得との損益通算ができなくなること、(ロ)事業所得で認められている最大65万円の特別控除(青色申告の場合)が受けられなくなること、ではないでしょうか?

 副業の収入が僅少で、もともと雑所得としていた者にとっては、何も変わらない改正ですが、そこそこの収入があり事業所得としていた者にとっては「事業所得として申告を続けたいのであれば、もっと頑張りましょう」とも受け取れる厳しい改正であると感じられます。

(※1)副業の収入が300万円を超えていても社会通念上事業とは言えないものは事業所得と認められない場合もあります。また、副業の収入が300万円以下であっても、主たる所得の収入金額の10%以上である場合など一定の場合には、事業所得と認められる場合があります。

 
 
【農業税務教室】 自己が育成・成熟させた生物の取得価額の取扱い

  農業においては、成熟した繁殖牛や搾乳牛、成木となった果樹など、特有な減価償却資産があります。生物(※1)とされるこれらの減価償却資産は、購入により取得する場合もありますが、自己が育成・成熟させる場合もあります。自己が育成・成熟させた生物の場合、取得価額はどのように認識するのでしょうか。

 減価償却の基礎となる取得価額は、資産の取得形態に応じて定められています。その中で、自己が育成・成熟させた生物の取得価額についてみれば、㋐ 種付費・出産費・種苗費等の価額(引取費用含む)㋑ 育成・成熟させるために要した飼料費、肥料費等の材料費に、労務費及び経費の額を加えた価額、㋒ その他、事業の要に供するために直接要する費用の額の合計額とされています(※2)。これら、㋐㋑㋒の費用は、販売される農畜産物(棚卸資産)に要する費用と共通することが一般的です。したがって、㋐㋑㋒の合計額を算出するためには、それら共通する費用を、育成・成熟に係る費用と、販売される農畜産物に係る費用のそれぞれに配分するといった作業が必要となります。

 実務的には、① 期中は育成・成熟に係る費用と、販売される農畜産物に係る費用とを区別することなく、すべてを一括して費用勘定で経理しておき、② 決算整理において、育成にかかる原価を按分して「育成費振替高(製造原価報告書末尾の控除項目)」として製造原価から除外し、「育成仮勘定(資産勘定科目)」に振り替えを行います。そして、③ 成熟した生物については、成熟日において「育成仮勘定」から「生物」勘定に振り替えを行い、減価償却を開始することになります(※3)

(※1)法令13条九号、所令6条九号(※2)法令54条1項三号、四号、所令126条1項三号、四号(※3)一般社団法人 全国農業経営コンサルタント協会 「農業の会計に関する指針」 5(2)

 
 
【国際税務教室】 海外子会社からの利息に対する消費税の取扱い

 日本の低金利を背景として、海外子会社の資金需要に対して、日本の親会社からの貸付で対応するケースも見られます。親子ローンなどと呼ばれるこのような取引は、移転価格税制上、適正な金利を設定する必要がある事から、親会社は海外子会社から利息を徴収していることが一般的といえます。このような場合、親会社の消費税申告に際して、注意が必要です。

 貸付利息は消費税法上、非課税取引に該当します(※1)。この場合、債務者が非居住者である場合には輸出免税の取引とされる(※2)ことから、仕入税額控除の計算を行うにあたっては、当該貸付利息は、課税売上割合の分母だけではなく、分子にも含めることができます(※3)。この取り扱いは「非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例」(以下、「特例」とします)と呼ばれていますが、非居住者の債務者から徴収する全ての利息に無条件に適用されるものではありません。適用には、輸出されたことについて証明がされていることが必要となります。

 具体的に見れば、約書等において、①貸付者の名称及び住所等、②貸付年月日、③貸付内容、④利息(利率)、⑤借入者の名称及び住所が記載されている場合には、当該貸付利息は輸出取引として証明がされたものとして、特例の適用ができます(※4)

 親子ローンの場合、口頭での契約に留まり、金銭消費貸借契約書(Loan Agreement)の作成がされない場合も想定されます。特例の適用については、注意が必要です。

(※1)消法6条1項、(※2)消法7条1項5号、消令17条3項、(※3)消法31条、(※4)消規5条1項4号