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税理士法人 成和新着情報

ガソリンスタンドにおける品転

  最近、セルフのガソリンスタンドが一般化してきたため、有人ガソリンスタンドにおいて事業者カード(掛カード)を発行してもらい、月末にガソリンスタンドより請求書が送られてくる、という取引形態をあまり見なくなりました。

 今回は、セルフが普及する前の昔話を。

 この、掛カードにより給油する際には、ガソリンスタンドは車の車番、油種をPOSに入力してから給油するのですが、その際に「品転」という脱税に繋がる行為が散見されておりました。

 品転とは、実際に受けたサービスと異なる内容の請求書を発行する行為で、例えばハイオクガソリンを給油したにもかかわらず、請求書に軽油の記載をするような行為をいいます。

 具体例の1つとして紹介すると…レギュラーガソリン150円/ℓ、軽油120円/ℓとします。

 通常レギュラーガソリンしか給油しない会社の従業員が、会社の掛カードで自分の四輪駆動車に軽油50ℓを給油した場合、そのまま請求書に記載されたら会社に不正使用が発覚されるため「品転」を行い、営業車にレギュラーガソリン40ℓを給油したことにした。

 この行為の問題点は、従業員の不正行為(業務上横領)にガソリンスタンドが加担しただけでなく、会社においても、この場合は消費税の納税が少なくなる(脱税)。通常、会計事務所は顧問先法人の営業車の運行記録の管理はしないため、不正行為に気づかず申告をしてしまい、知らないところで不正に加担していることであろう。

 しかし、最近ではこのような不正は減少しており、さらに来秋導入されるインボイス制度が始まると、このような不正が難しくなるため、不正防止に一役を担うものと理解すれば、インボイス制度も決して悪いものでは無いのかも知れない。

 

 
【農業税務教室】 従事分量配当と法人事業概況説明書の従事員等

  財務省令において、法人の事業等の概況に関する書類の法人税確定申告への添付が定められている(※1)ことから、実務上、確定申告書には「法人事業概況説明書」(以下、「概況書」とします)を添付することが一般的です。概況書は法人税申告書のみではわからない当該法人の事情や状況など、事業等の概況を説明するための書類と位置付けられます。記載項目は、事業の内容から、経理の状況、事業形態など多岐にわたりますが、その中のひとつに、当該法人の期末の従事員等の人数を記載する項目があります。

 従事分量配当制を採用する農事組合法人において、この期末の従事員等の人数の記載にあたり判断に迷う場合があります。当該項目には、役員や使用人をはじめとした当該法人の従事員の人数を記載する必要がありますが、従事分量配当を受ける組合員は、ここでいう従事員に該当するのでしょうか。

 国税庁の「法人事業概況説明書の書き方」の記載要領によれば、当該欄には役員、使用人をはじめ、職種ごとの人数を記載するものとされ、当該職種の例として、「工員、事務員、技術者、販売員、労務者、料理人、ホステス等」が挙げられています。この事から、ここでいう従事員とは、役員や使用人に限られず、当該法人の業務に従事するその他の者を含む概念と言えます。また、法人税法によれば、従事分量配当は、農事組合法人の「事業に従事した程度に応じて分配」されるものとされています(※2)。したがって、法人税法は従事分量配当を受ける組合員を、当該農事組合法人の事業に従事する者と認識しているものと考えます。

 これらからすれば、農事組合法人から従事分量配当を受ける組合員は、概況書の「従事員等」に該当するものと考えられます。

(※1)法規35条五号、(※2)法法60条の二第2項

 

 
【国際税務教室】 恒久的施設が負担する使用料と源泉徴収義務

  所得税法上、非居住者や外国法人に対して国内源泉所得となる使用料を支払う際には、支払者に源泉徴収義務が課せられています。海外に所在する日本企業の支店や工場などが、現地で支払う使用料に対する(日本の)源泉徴収義務の取扱いについて、迷う場合も少なくありません。

 使用料の源泉地については、権利を使用した国であるとする使用地主義といった考え方と、使用料の支払者の居住地国であるとする債務者主義といった考え方の二つが存在します。日本の国内法は使用地主義をとっています。他方、多くの租税条約においては債務者主義がとられています。わが国の国内法においては、(国内法と租税条約の規定が異なる場合には、租税条約の取り扱いによるとする)源泉置換規定が存在することから、債務者主義をとる租税条約の締結国内で日本の居住者が支払う使用料は、(国外で使用されるものであっても)国内源泉所得に該当することになります。それからすれば、使用料の源泉地について債務者主義をとる租税条約の締結国に所在する日本企業の支店や工場などが現地で支払う使用料は、原則的には、国内源泉所得として支払者に源泉徴収義務が存在することになります(※)。しかし、わが国が締結した租税条約の多くは、原則的には債務者主義をとりながらも、その使用料が使用料の受益者の恒久的施設によって負担されいている場合には、当該恒久的施設の所在地を使用料の源泉地とするといった例外規定を置いています。したがって、そのような租税条約による例外規定の適用を受ける場合には国外源泉所得となり、支払者に源泉徴収義務は存在しないことになります。

(※)置換規定の性格については、納税者の有利な場合にのみ適用される(課税できない)とする考え方も存在します。

 
 
インボイス制度導入の前にすることはなかったのか?

  2023年10月より、いわゆるインボイス制度がスタートします。

 これは、事業者が免税事業者から仕入れを行った場合に仕入税額控除を認めない、つまり免税事業者から仕入れを行った事業者が消費税計算において仕入税額控除を適用できないため、事業者の納める消費税が増えるという制度である。
 そのため、免税事業者から仕入れを行う事業者は、仕入先を課税事業者に変更したり、免税事業者と取引を続ける代わりに税負担を減少させるために取引価格の見直し(いわゆる値引き)を求めたり、自身も販売の価格見直しを行ったり・・・との対応に追われています。
 某自動車メーカーのように、第n次下請けに免税事業者がいるような場合、インボイスによりn-1次下請けの消費税の税負担が上昇した場合でも、最終的に車の販売価格が上昇することは考えにくいため、インボイスによる負担増はn-1次下請けが負担することになりそうですが、中小企業の場合は自身が免税事業者から仕入れを行うことがあるため、消費税の負担分を販売価格に転嫁することも予想されます。つまり、インボイスの導入により経済成長以外の理由による物価上昇が起こる可能性もあるのです。
 ただ、免税事業者における益税問題を解消するための手段としてインボイス制度を導入したことは評価できるが、例えば、現行1,000万円の免税点を現金主義の特例に合わせ300万円に引き下げたのちにインボイス制度を導入する方法もあったのではないか、という議論もありますが、インボイスによる影響を秋の夜長にじっくりと考えてみるのもよいのかも知れません。
 
 
【農業税務教室】 園芸施設(ビニールハウス等)の耐用年数

  作物の出荷期間の調整や天候に左右されない安定供給を目的に利用される園芸施設は、その主流がビニールトンネルや雨よけ施設から温室へと移っています。温室はガラスで被覆されるものもありますが、塩化ビニルや硬化プラスチック等により被覆される温室(以下、「ビニールハウス等」とします)を多く見受けます。

 このような農業用のビニールハウス等を新設した場合、耐用年数を何年にするのかについて迷う場合も少なくありません。農業用のビニールハウス等については、それが構築物に該当する場合には、別表一(※2)「構築物」の「農林業用のもの」に掲げられる耐用年数(骨格部分が金属造であれば、14年、木造であれば5年、その他のものであれば8年)を適用し、(構築物に該当せず)器具備品に該当する場合には、の「器具備品」の「11前掲のもの以外のもの」に掲げる耐用年数(骨格部分が金属造であれば、10年、その他のものであれば5年)を適用するものとされます(※1)。構築物、器具備品のいずれに該当するのかについて、どのように判断するのでしょうか。

 税務上、構築物は土地に定着する工作物とされます(※3)。したがって、園芸施設の土地への定着の有無にて、構築物に該当するか否の判断がなされることになります。ビニールトンネルや雨よけ施設等の簡易な施設から高度化されたビニールハウス等は、自然災害への備えのため強度が高められていることからも、基礎等により物理的に土地に固着されていることが一般的といえます。また、園芸作物の安定供給を目的として設置される園芸施設は一時的なものではなく、恒常的に設置されていることが多いものと考えます。したがって、そのような場合には、土地に定着する工作物といえることから構築物に該当するものと考えます。

(※1)国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/26.htm (※2)減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一(※3)法施令13②、所施令6②