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国内・国際税務、農業の会計・税務コンサルティングを行う税理士法人 成和。

 

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税理士法人 成和新着情報

【農業税務教室】 園芸施設(ビニールハウス等)の耐用年数

  作物の出荷期間の調整や天候に左右されない安定供給を目的に利用される園芸施設は、その主流がビニールトンネルや雨よけ施設から温室へと移っています。温室はガラスで被覆されるものもありますが、塩化ビニルや硬化プラスチック等により被覆される温室(以下、「ビニールハウス等」とします)を多く見受けます。

 このような農業用のビニールハウス等を新設した場合、耐用年数を何年にするのかについて迷う場合も少なくありません。農業用のビニールハウス等については、それが構築物に該当する場合には、別表一(※2)「構築物」の「農林業用のもの」に掲げられる耐用年数(骨格部分が金属造であれば、14年、木造であれば5年、その他のものであれば8年)を適用し、(構築物に該当せず)器具備品に該当する場合には、の「器具備品」の「11前掲のもの以外のもの」に掲げる耐用年数(骨格部分が金属造であれば、10年、その他のものであれば5年)を適用するものとされます(※1)。構築物、器具備品のいずれに該当するのかについて、どのように判断するのでしょうか。

 税務上、構築物は土地に定着する工作物とされます(※3)。したがって、園芸施設の土地への定着の有無にて、構築物に該当するか否の判断がなされることになります。ビニールトンネルや雨よけ施設等の簡易な施設から高度化されたビニールハウス等は、自然災害への備えのため強度が高められていることからも、基礎等により物理的に土地に固着されていることが一般的といえます。また、園芸作物の安定供給を目的として設置される園芸施設は一時的なものではなく、恒常的に設置されていることが多いものと考えます。したがって、そのような場合には、土地に定着する工作物といえることから構築物に該当するものと考えます。

(※1)国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/26.htm (※2)減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一(※3)法施令13②、所施令6②

 
 
【国際税務教室】 源泉置換規定とプリザベーション原則

  非居住者及び外国法人は国内源泉所得について課税を受けます。所得の源泉地を定める法規則はソースルールと呼ばれ、国内法では、所得税法161条及び法人税法138条において定められています。他方、ソースルールは租税条約においても定められることもあります。したがって、国内法と租税条約のソースルールが異なる場合も存在することになります。そのような場合、所得税法162条及び法人税法139条(以下、「源泉置換規定」とします)が、国内源泉所得につき「租税条約において国内法の規定と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる」と規定していることから、国内法上国内源泉所得ではない所得が、租税条約の定めにより我が国の国内源泉所得となり課税されることもあります。

 国内法と租税条約の適用に関しては、日本国憲法98条2項の規定に基づき、条約の規定が明確性と完全性の要件を満たしている場合には、条約が優先して適用されると解されている上で、通説として、課税要件法定主義の見地から、課税の根拠は国内法に基づく必要があり、租税条約の規定を根拠に課税を行うことはできないという考え方(以下、「プリザベーション原則」とします。」)が存在します。源泉置換規定とプリザベーション原則の関係はどのように考えればよいのでしょうか。置換規定の性格については、① 納税者の有利な場合にのみ適用される(課税できない)、② 租税条約上のソースルールを国内法に取り込む創設的な規定である(課税できる)、③ プリザベーション原則はソースルールには適用されないことの確認的な規定(課税できる)であるといった、三つの説が唱えられています。

 
 
税金のクレジットカード納付は公平か、不公平か

  2017年1月より国税のクレジットカード決済による納税が開始(地方税は以前から開始している)し、納税方法として普及してきたのではないか、と思われます。

 今回は、クレジットカード納付ができる種々の税金のうち、「所得税」に焦点を当てて公平か不公平か、という観点から見ていきたいと思います。

 いま、事業所得者と給与所得者の2人の申告者がおり、それぞれ年間の所得税が500万円であると仮定します。事業所得者はこの計算された所得税を納付する必要があり、クレジットカード納付も可能です。一方で、給与所得者は勤務先により源泉徴収をされているため、例えば400万円が源泉徴収されていれば、差引100万円の所得税を納付すればよく、こちらもクレジットカード納付も可能です。

 クレジットカード納付をすればポイントが付与され、還元率が0.85%以上のカードなら、手数料を差し引いても実質プラスになるため、クレジットカード納付をしたいと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし給与所得者は全体5,928万人のうち、年末調整のみで完結し確定申告を要しない者(上のように確定申告ができる者以外)が約3,500万人おり、これらの者はクレジットカード納付を選択する機会さえ与えられないのです。(注)数値は令和2年末

 一旦は平等にクレジットカード納付を選択する機会が与えられないのは不平等と考える意見もありますが、給与所得者に認められている年末調整(確定申告不要)こそ不平等であると考える意見もあります。視点が異なれば、それぞれの制度がよく見えるのかも知れません。

 
 
【農業税務教室】 卸売市場特例と家畜市場(インボイス制度)

  適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」とします)においては、事業者が行う事業の性質上、適格請求書等(以下「インボイス」とします)の交付が困難な取引も存在することから、一定の取引についてインボイスの交付義務を免除しています(※1)。卸売市場を通じて販売される生鮮食料品は、出荷者を特定することなく取引されることから、買い手は出荷者を把握することができません。したがって、インボイス制度では、卸売市場法に規定する卸売市場(以下、「卸売市場」とします)において行う生鮮食料品等の販売については、売り手(出荷者)のインボイスの交付義務を免除しています。この場合、買い手は卸売市場が発行する一定の書類を保存すること等により、仕入税額控除ができるものとされます(以下、「卸売市場特例」とします)(※2)。したがって、卸売市場における生鮮食料品の買い手は、出荷者がインボイスを発行できない免税事業者であったとしても、卸売市場が発行する一定の書類を保存すること等により、仕入税額控除をすることができます。このように、インボイス制度の下でも、卸売市場を通じた取引においては、免税事業者の出荷者に取引上の不利益が生じることはありません。

 他方、子牛の市場販売など、家畜取引法に規定する家畜市場における家畜の取引は、卸売市場特例の対象とされていないことから、売り手(出荷者)のインボイスの交付義務は免除されません(※3)。したがって、家畜市場における家畜の買い手は、出荷者のインボイスの保存が無ければ仕入税額控除ができません。このことから、インボイス制度の下では、家畜市場を通じた取引について、免税事業者の出荷者に取引上の不利益が生じることも想定されることから、注意が必要となります。

 

(※1)消法57の4① (※2)消令70の9②二イ(※3)家畜市場の取引は、買い手が出荷者を特定できる事が理由と考えます。

 
 
【国際税務教室】 海外赴任者が行うFX取引(デリバティブ取引)

  国境を越えて行われるFX取引や先物取引など、クロスボーダーで行う金融商品取引法の市場デリバティブ取引及び店頭デリバティブ取引の決済より生じる所得(以下、「デリバティブ所得」とします)の取り扱いが変更されています(※1)

 従来は、恒久的施設に帰属するデリバティブ所得を除き、非居住者又は外国法人に係るデリバティブ所得は、国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に該当すると取り扱われていたことから、例えば、海外赴任中の者が日本の証券会社を通じて行うFX取引から生じる所得については、国内源泉所得として課税されてきました。このような取り扱いは、国税不服審判所の裁決においても事例が存在しています(※2)。しかし、令和4年度税制改正の大綱において、取り扱いの明確化を行うとされたことを受けて、デリバティブ所得は国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に含まれないとする法整備が図られました(※3)。したがって、従前の取扱いが変更されています。

 この取り扱いの変更は、過去に遡って適用されるとされている(※1)ことから、過去のデリバティブ所得について所得税を納税しているなど、税金の納めすぎにとなっている者の場合、更正の請求を行うことにより、納めすぎた税金の還付を求めることができます(※4)

(※1)「クロスボーダーで行うデリバティブ取引の決済により生ずる所得の取扱いについて」令和4年1月 国税庁

(※2)平成31年3月25日東京裁決(裁決番号:(所)平30-115)(※3)改正後の所得税法施行令280条2項二号

(※4)所得税又は法人税の還付を受けるための更正の請求は、法定申告期限から5年以内の場合に限られます。