非居住者及び外国法人は国内源泉所得について課税を受けます。所得の源泉地を定める法規則はソースルールと呼ばれ、国内法では、所得税法161条及び法人税法138条において定められています。他方、ソースルールは租税条約においても定められることもあります。したがって、国内法と租税条約のソースルールが異なる場合も存在することになります。そのような場合、所得税法162条及び法人税法139条(以下、「源泉置換規定」とします)が、国内源泉所得につき「租税条約において国内法の規定と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる」と規定していることから、国内法上国内源泉所得ではない所得が、租税条約の定めにより我が国の国内源泉所得となり課税されることもあります。
国内法と租税条約の適用に関しては、日本国憲法98条2項の規定に基づき、条約の規定が明確性と完全性の要件を満たしている場合には、条約が優先して適用されると解されている上で、通説として、課税要件法定主義の見地から、課税の根拠は国内法に基づく必要があり、租税条約の規定を根拠に課税を行うことはできないという考え方(以下、「プリザベーション原則」とします。」)が存在します。源泉置換規定とプリザベーション原則の関係はどのように考えればよいのでしょうか。置換規定の性格については、① 納税者の有利な場合にのみ適用される(課税できない)、② 租税条約上のソースルールを国内法に取り込む創設的な規定である(課税できる)、③ プリザベーション原則はソースルールには適用されないことの確認的な規定(課税できる)であるといった、三つの説が唱えられています。