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税理士法人 成和新着情報

【農業税務教室】 農業経営収入保険の保険金等の見積計上誤り

  農業経営収入保険の保険金及び特約補填金のうち国庫補助相当分(以下、「保険金等」とします)は、保険期間の年又は事業年度(以下、「保険期間の課税年度」とします)の確定申告期限後(すなわち、保険期間の翌課税年度)に金額が確定し支払われます。この保険金等について、税務上は、保険金等の額が確定した日の属する課税年度の総収入金額又は益金(以下、「収益」とします。)ではなく、保険期間の課税年度の収益として、保険期間の課税年度の確定申告に際して見積計上を行う事とされています(※)。見積計上を行うという性質上、見積計上額と実際に支払われる保険金等との間に差額が生じる場合も想定されます。そのように差額が生じた場合、税務上はどのように取り扱うのでしょうか。

原則的な取り扱いによれば、保険期間の課税年度の所得の金額を是正することになります。具体的にみれば、① 見積計上額が実際の保険金等の支払額を上回っていたことにより、税額を多く申告している場合には、「更正の請求」を行い、正しい税額への訂正を求めることができます。また、② 見積計上額が実際の保険金等の支払額を下回っていたことにより、税額を少なく申告している場合には、「修正申告」を行い、正しい税額に修正する必要があります。

原則的な取り扱いは上記の通りですが、それには一定の手間もかかることから、見積計上額と実際に支払われた保険金等の金額との差額が少額である場合には、保険期間の課税年度の所得金額を是正することに代えて、保険期間の翌年又は翌事業年度の所得の金額を計算する際、当該差額を減算又は加算することにより調整することができるとされています(※)

(※)「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて」農林水産省経営局保険課長29経営第3611号

 
 
【国際税務教室】所得税法上の為替差損益の取り扱い 

  20年ぶりのドル高・円安となるなど、円が記録的な安値をつけている現在。所有する外貨を円転する取引も散見されます。その場合、税務上の取り扱いに注意が必要です。

 所得税法上、居住者が外貨建取引を行った場合には、取引時の外国為替の売買相場により換算した金額により所得の金額を計算する(※1)とされていることから、円転時の額と外貨の購入額との差額は所得(※2)として認識する必要があります。したがって、例えば、銀行の外貨預金を解約し、円で払出を行った場合は、所得税法上、為替差損益を認識する必要があります。

 他方、外貨預金を解約し、同一の通貨で再度預入れる場合にも、為替差損益を認識する必要があるのでしょうか。法令によれば、同一の金融機関に、同一の外国通貨で、継続して預入れる場合には、(収入が実現していないことを理由として)外貨建取引に該当しないと例示されています(※3)。したがって、同一の外国通貨で、別の金融機関の預金に預入を行っている場合においても、収入が実現していないことから、為替差損益を認識する必要はありません(※4)

 これに対して、外貨預金を解約し、同一通貨建ての投資信託を購入するなど、通貨は同一であったとしても新たな資産への投資を行った場合や、別の通貨建ての外貨預金に預入するなどした場合には、収入が実現したものと認識され、それら取引は外貨建取引に該当することから、為替差損益を認識することが必要となります。

(※1)所法57条の3第1項 (※2)為替差損益の所得分類は雑所得という考え方のほか、譲渡所得という見解もあります。(※3)所令167条の6第2項(※4)国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/39.htm

 
 
詐欺による収益って課税されるの?

   山口県阿武町が新型コロナ対策の給付金を誤って20代男性に4,630万円振り込んだ問題で、男性は電子計算機使用詐欺容疑で逮捕されましたが、税金の観点からも、この問題は注目されています。

それは、所得税基本通達36-1において「・・・その収入の起因となった行為が適法であるかどうかを問わない。」とされており、犯罪により得た収入についても課税される(※)ことが明記されているからです。
  通常、犯罪により収益を得たとしても、まじめに確定申告をすることなど考えられませんが、今回の場合、全国ニュースで報道されているため、課税庁により課税される可能性があります。
  その場合、この収益は「一時所得」に該当するため、課税の対象となる金額は、(総収入金額4,630万円-収入を得るために支出した金額0円-特別控除額50万円)×1/2=2,290万円となり、ほかに収入が無く、所得控除も無いとした場合、所得税額は(2,290万円-基礎控除48万円)×40%-279.6万円=617.2万円、これに復興税2.1%を加算すると約630万円となります。このほかに住民税も課税され、同様に約225万円と計算され、合わせて855万円納税しなければなりません。
※いったんは所得として課税されますが、求償権を行使され、その後において弁済をした場合には、所得が減少するので更正の請求ができますが、法定申告期限から5年を超えて弁済した場合には救済はないと考えられます。※※本稿執筆後に、第三者により約3,500万円が阿武町に返還されています。
 
 
【農業税務教室】 補助対象財産の有償譲渡・貸付

  農業経営の法人化やグループ化を行うに際しては、必要に応じて、所有する農業用機械等を新設法人やグループ内の法人に、有償にて譲渡や貸付を検討することがあります。その際、対象となる機械等が補助金等を利用して導入した財産である場合には、補助金の返還とならないよう取り扱いに注意が必要です。

 補助事業により取得した財産(以下、「補助対象財産」とします)は、各省各庁の承認を受けないで、補助事業の交付の目的(以下、「補助目的」とします)に反し譲渡や貸付等は行うことができないとされています(※1)。補助対象財産の有償譲渡や貸付については、どのような場合に承認が受けられるのでしょうか。

 農林水産省に関する補助金の場合、農林水産省大臣官房経理課長の通知(※2)に必要な手続きと承認の基準が定められています。それによれば、補助対象財産の所有者が処分制限期間(※3)内に、補助目的に反して、①使用し、②譲渡し、③交換し、④貸し付け、⑤担保に供し、又は⑥取り壊す(以下、「財産処分」とします)場合には、農林水産大臣に申請(以下、「財産処分申請」とします)し、その承認を受けなければならないとされています。その際、財産処分申請の承認は、有償譲渡及び(一年以上の長期の)有償貸付においては、補助対象財産の所有者の、㋐農業経営の法人化に伴うもので、経営に同一性・継続性が認められる場合、あるいは、㋑事業の効率化等による収益力の向上を図るため、議決権の過半数を有する別法人に譲渡・貸付する場合のいずれかに該当し、かつ、㋒補助対象財産の処分制限期間の残期間内、補助条件を承継する場合においては、補助金返還は不要(国庫納付を要しない)とされています。

(※1)補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 22条 (※2)補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分等の承認基準(最終改正 令和3年12月24日3予第1774号)(※3)農林畜水産業関係補助金等交付規則5条で定める期間

 
 
【国際税務教室】 企業グループ内役務提供の独立企業間価格

  多国籍化した企業グループにおいては、経営や財務・労務の管理、営業・購買・物流の支援、経理等の事務といった業務を、グループ内部で相互に提供する活動が散見されます。このような幅の広い活動は企業グループ内役務提供とよばれ、移転価格税制上、当該活動に経済的又は商業的価値が認められる場合には、当該活動に係る適正な対価を提供先のグループ企業から回収する必要が生じます。その際、回収する価格について、迷う場合も少なくありません。

 「移転価格事務運営要領」(以下、「要領」とします)によれば、総原価を5%マークアップした価格をもって独立企業間価格とする方法(※1)(以下、「簡易な算定方法」とします)と、総原価の価格をもって独立企業間価格とする方法(※2)(以下、「総原価法」とします)の二つの算定方法が定められています。これらは、どのように区分して適用されるのでしょうか。

  要領によれば、簡易な算定方法の適用要件は、役務提供が支援的な性質のものであり、当該法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業に直接関連しないこととされています。他方、総原価法の適用要件は、①役務提供が当該法人又は国外関連者の本来の事業に付随して行われたもの、又は②役務提供が当該法人又は国外関連者の事業活動の重要な部分に関連していないものとされますが、注書きによれば、当該役務提供に要した費用の額が、当該法人又は国外関連者の原価又は費用の総額の相当部分を占める場合には、総原価法の適用をしないこととされていることから、当該役務提供が、いずれの法人においても主要な事業活動に該当しない場合には、総原価法の適用ができるものと考えます。(※1)要領3-11(1)(※2)要領3-11(3)