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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 国際郵便により輸出した場合の輸出証明書類の見直し

  コロナ禍で各国のEC市場が活況を呈するなか、越境ECに取り組む企業も増加しています。その場合、国際郵便を利用することも少なくありません。この度、消費税法等の改正により、郵便物として輸出した場合における輸出証明書類の見直しがなされたことに注意が必要です。

 事業者が国内で資産の譲渡等を行う取引は、原則として課税取引とされます。しかし、当該資産の譲渡等が輸出取引に該当する場合には、消費税が免除されます(以下、「輸出免税」とします)。この場合の輸出取引とは、商品の輸出や国際郵便等で(資産の譲渡等が輸出取引に該当することについての)一定の証明がなされたものとされています。すなわち、輸出免税の適用を受けるためには、当該資産の譲渡等が輸出取引に該当することについての証明が必要となります(※1)

 改正前までは、郵便物(※2)として輸出した場合には、輸出年月日、輸出資産の品名や数量、受取人の氏名や住所等について記載を行った帳簿を保存することによっても、当該帳簿が輸出取引に該当することについての証明とされ、輸出免税の適用を受けることができました(※3)。しかし、帳簿へ虚偽記載を行うことにより不正に輸出免税の適用を受ける事例が散見されたことから、令和3年10月1日より取り扱いが改正されます。改正後は、帳簿への記載に代えて、郵便物に貼付した発送伝票の控や日本郵便株式会社から交付された引受証等の書類を保存することが必要となります(※4)。保存が求められる書類は、郵便物の種類の区分に応じて定められていることから、正しく認識した上で、適正に保存することが求められます。

(※1)消法7条2項 (※2)関税法76条1項の郵便物。(※3)旧消規5条1項二号 (※4)消規5条1項二号

 
 
ロスの豪邸を売却して話題に・・・氷室京介さん

  歌手の氷室京介さんがロサンゼルスにある豪邸を売却したことがロサンゼルス・タイムズで報じられ、日本でも話題となりました。

 氷室京介さんは、1997年から家族とともに米国で暮らしており、2004年に今回売却された豪邸を640万ドル(約7億円)で購入しており、2021年8月20日に900万ドル(約10億円)で売却し、約3億円の売却益が出ました。

 アメリカでは「納税者が一定の居住用不動産を売却した場合、売却益から25万ドル(夫婦合算申告であれば50万ドル)を控除した金額」が長期キャピタルゲインとして15%の税率で課税されます。今回の報道では、購入金額と売却金額しか明らかにされていないため、売却金額-購入金額を売却益、夫婦合算で申告したものと仮定すると、長期キャピタルゲインは210万ドルとなり、連邦所得税は210万ドル×15%=315,000ドル(約3,500万円)となります。

 一方で、これが日本での話であれば、どのくらい課税されるのだろうか?

 このケースは居住用不動産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例が適用できるため、売却益から3,000万円の特別控除(※1)後の金額に15.315%(6,000万円以下の部分は10.21%)の税率で課税(※2)され、所得税及び復興特別所得税が約3,800万円となります。

 この豪邸は、キアヌ・リーヴスやパリス・ヒルトンなどハリウッドセレブが住むビバリーヒルズにあるため、20年近く住み続けながらも高い資産価値を有し続け、購入価格をはるかに上回る金額で売却できたのでしょう。(※1)措租税特別措置法35①、(※2)同31の3①

 
 
【農業税務教室】 収入保険の収益の計上時期

 税務上、保険金や共済金を受け取る場合、原則的には、それらの金額が確定した日の属する年又は事業年度分(以下、「課税年度」とします。)の総収入金額又は益金(以下、「収益」とします)とされます。しかし、農業経営収入保険(以下、「収入保険」とします)は、例外的な取り扱いとなることから、注意が必要です。

 収入保険の取り扱いをみれば、保険金及び特約補填金のうち国庫補助相当分(以下、「保険金等」とします)は、保険期間の課税年度の確定申告期限後(すなわち、保険期間の翌課税年度)に金額が確定し支払われます。この保険金等について、税務上は、保険金等の額が確定した日の属する課税年度の収益ではなく、保険期間の課税年度の収益として、保険期間の課税年度の確定申告に際して見積計上を行う事とされています(※)

 同種の取り扱いは、必要経費又は損金(以下、「費用」とします)に算入される損失の額と対応関係にある保険金にもみられます。このような保険金に対して原則的な取り扱いを適用した場合、損失の額と収益の計上時期にズレが生じ得ます。そのような事態は適当ではないことから、所得税基本通達51-7では、損失の生じた年分の確定申告期限までに保険金の金額が確定していない場合には、保険金の金額を見積り、当該見積額を損失額から控除するとしています。また、法人税法上も、適正な期間損益の算定という観点から、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」である「費用収益対応の原則」に従い、損失とそれに対する保険金との間に、対応関係を求めることが必要と解されています。

 収入保険は農業者の収入減少を補償対象とするものであり、費用との対応関係が明らかといえます。したがって、収入保険のこのような税務上の取り扱いは、損失の額と対応関係にある保険金の取り扱いと平仄をあわせるものと考えます。(※)「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて」農林水産省経営局保険課長29経営第3611号

 
 
【国際税務教室】 輸出免税となる取引

  海外の事業者へ物品の譲渡を行う場合、消費税の取り扱いに迷うことも少なくありません。

 消費税法上、物品の譲渡を行う場合、当該物品の譲渡が国内取引に該当するときには、課税の対象となります。他方、物品の譲渡が国内取引に該当する場合であっても、その物品が輸出される場合には、消費税が免税(消費税の課税の対象から除外することに加えて、その仕入れに含まれていた消費税額を控除・還付することにより、実質的に税負担をゼロとすること。以下、「輸出免税」とします。)とされます。それでは、どのような取引が輸出に該当するのでしょうか。

 消費税法上、輸出とされる物品の譲渡とは、当該物品を「外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引き渡しが行われるものをいう」(※1)と解されています。したがって、外国に仕向けられた船舶又は航空機への積み込みよりも前の段階において、買主に目的物の引き渡しが行われるといった取引は、仮にその後、当該物品が通関され、外国に仕向けられた船舶又は航空機搬入されているとしても、消費税法上の輸出には該当しないと考えられることから、輸出免税の取り扱いは受けられないものと考えられます。

 このように、貿易取引によって海外に物品の譲渡を行うすべての場合において、輸出免税が適用されるというわけではなく、輸出免税の適用には、当該貿易取引が消費税法上の輸出に該当する必要がある(※2)ことに注意が必要といえます。

(※1) 東京地判平成18年11月9日 (※2) 加えて、免税の適用を受けるためには、消費税法において定められた輸出取引等の証明がされたものといった条件を満たす必要があります。

 
年間110万円の贈与税非課税がなくなる!?

 令和3年度税制改正大綱(2020年12月10日自由民主党・公明党)において、相続税・贈与税について「諸外国の制度を参考にしつつ…現行の相続時精算課税制度(※1)と暦年課税制度のあり方を見直すなど…資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」と明記されました。

 例えば、息子へ資産を生前贈与する場合を考えてみます。

 <相続財産に含める生前贈与財産の範囲>

 日本(暦年課税) 相続開始前3年以内

 日本(相続時精算課税) 精算課税選択後

 (参考)アメリカ 一生涯

 (参考)フランス 一定期間(15年)

 暦年課税を選択すれば、相続開始前3年以内の贈与財産しか相続財産に含めないため、生前贈与と相続では税負担が大きく異なり、資産移転の時期に中立ではないが、相続時精算課税を選択すれば、選択後は、生前贈与と相続で税負担が変わらず、資産移転の時期に中立であるといえます。

 一生涯の生前贈与と相続で税負担が変わらないアメリカ、一定期間の生前贈与と相続で税負担が変わらない欧州の制度を参考にするとあるため、わが国の今後の方向性は、暦年課税を縮小あるいは廃止し、相続時精算課税に一本化されると考えられるため、今後の議論に注目したい。

(※1)高齢世代が保有する資産を、消費意欲の高い若年世代への移転を促すことを目的に平成15年度税制改正で導入された。いったんこの制度を選択したら、それ以後暦年課税を選択できなくなります。