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税理士法人 成和新着情報

【農業税務教室】 補助金や助成金の収益への計上時期

  農業経営においては、補助金や助成金等の交付を受けることも少なくありません。その場合、当該補助金や助成金等について、いつの時点において収益(益金)に計上するのでしょうか。

 法人税法上、収益(益金)の計上時期は権利確定主義がとられていることから、補助金等の場合には、交付が決定された日の属する事業年度に収益(益金)計上することが原則的な取扱いとなります。ただし、実務的には、①具体的な経費を補填するための補助金や、②肉用牛免税の対象となる生産者補給金等のように、原則的な取扱いとは異なる取扱いとなる補助金等も存在することから、注意が必要です。

 ①についてみれば、このような補助金は、交付の原因となる経費の支出に当たり、あらかじめ補助金等による補填を前提とした所定の手続きがとられ、その手続きのもとに経費の支出がなされることにあることから、その交付の原因となった経費の発生があった日の属する事業年度において、(補助金等の交付が決定されていない場合においても、交付額を見積もることにより)収益(益金)計上することになります(※1)。このように処理されることにより、収益(益金)と費用(損金)の対応関係が保たれることになります。

 また、②の場合、(肉用牛の取引価格が一定の価格を下回る場合に交付される)生産者補給金等が交付されているケースにおいて、肉用牛売却所得の課税の特例(※2)を適用するに際しては、売却金額は当該補給金等の額を加算した金額とされることもあることから、生産者補給金である「肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)」や「肉用子牛生産者補給金」は、肉用牛を売却した日において収益(益金)計上することが一般的です(※3)

(※1)法人税基本通達2-1-42 (※2)租税特別措置法67の3 (※3)他方、肉用牛肥育の経営悪化を背景とした「肥育牛経営等緊急支援特別対策事業奨励金」については、原則的な取扱い(交付決定日に益金計上)となります。

 
【国際税務教室】 海外赴任とストックオプション(外国税額控除)

  新株予約権(以下、「ストックオプション」とします)は、権利付与から権利行使を通じて取得した株式の譲渡まで長期間を要することから、その間に権利を付与された者が海外赴任を行うケースもみられます。所得税法上、適格とされるストックオプションに対する課税は、居住者、非居住者の区別なく株式の譲渡時まで繰り延べられます。したがって、税制適格となるストックオプションの付与を受けた者に、権利付与から株式の譲渡までの間に、海外赴任等による非居住者の期間が存在したとしても、株式の譲渡時まで課税は繰り延べられます。他方、わが国において税制適格とされるものであっても、赴任先国では税制非適格として権利行使時に課税を受ける場合も想定されます。そのような場合、帰任等によりわが国の居住者となった後の株式譲渡に係る所得税申告に際しては、外国税額控除の適用について注意が必要です。

 所得税法上、非居住者の期間内に生じた所得に対する外国税額は、外国税額控除の対象外とされます(※1)。それにより、税制非適格として権利行使時に赴任先国で課税された外国税額は、非居住者の期間内の所得に対するものとして、外国税額控除の対象外に見えます。しかし、所得税法上、ストックオプションの権利行使時の所得は給与所得に該当し(※2)、当該給与所得の収入すべき時期は権利行使日とされる(※3)ことから、権利行使日が日本帰任後(居住者となった後)の場合には、赴任先国で赴任期間に応じて課税された外国税額であっても、居住者の期間に生じた所得に対する外国税額として、外国税額控除の対象となります。

(※1)所法95条1項、所令222の2条4項1号 (※2)所基通23~35共-6(1) (※3)所基通23~25共-6の2

 
インボイス制度による免税事業者への影響④

  前回まで、請求書等保存方式の場合、A商店(免税事業者)がB商店(課税事業者)へ商品の販売をした場合について「益税」が生じることを確認しました。

 この益税を封じるために2023年10月よりインボイス制度が導入され、これにより事業者が仕入税額控除を受けるためにはインボイスの交付を受けなければなりません。

 事業者がインボイスを発行するには、課税事業者であることが必要で、かつ事前に税務署に届出て登録番号を取得する必要があります。そのため、免税事業者は、あえて課税事業者を選択しない限り、インボイスを発行することができず、入り口で制度から除外されてしまいます。

 これにより、B商店が従来通り仕入税額控除を受けるためには、仕入先をA商店から課税事業者であるC商店に変更することで対応してゆく可能性があります(この場合A商店は取引先を失うことになります)。あるいは、B商店がA商店より経済的優位にある場合には、A商店に消費税相当分の値引きを求め、キャッシュアウトが不利にならないようにする可能性があります(この場合、A商店値引き分の利益を逸失することになります)。

 いずれの場合も、免税事業者であるA商店にとって厳しいものとなります(あえて課税事業者を選択しても然り)。益税を封じることは必要であるが、事業者の経済活動にバイアスをかけるような税制改正について賛否議論がありますので、注視が必要です。

 免税事業者が今後必要な税務戦略については、別の機会にお話ししたいと思います。

 
【農業税務教室】 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳

 固定資産の取得に際して国庫補助金等(以下。「補助金等」とします)の交付を受ける場合には、圧縮記帳の適用により、補助金等の交付を受けた事業年度の課税を繰り延べることができます。

 補助金等は、交付決定日の属する事業年度に益金に計上されます。他方、当該補助金等により取得した減価償却資産は、原則的には法定耐用年数に応じた期間で損金に計上されます。その場合、益金と損金の計上のタイミングに差が生じることから、一時的な課税を受けることになります。そのような状況では、補助金等の交付目的が果せない結果となることから、一定の要件の下、圧縮記帳という特例が設けられています(※1)

 圧縮記帳とは、補助金等の金額を限度として資産の取得のために支出した金額について損金算入を認めるものであり、①固定資産の取得に充てるための補助金等の交付を受け、②その補助金等をもって交付目的に適合した固定資産の取得をした場合において、③その補助金等の返還を要しないことがその事業年度終了の時までに確定した場合に、④帳簿価額を損金経理により減額をする等といった要件の下、適用されます。

 実務的には、③の要件を満たさない場合、すなわち、補助金等の返還を要しないことが、その事業年度の終了の時までに確定しないといったケースにおいて、圧縮記帳の適用に関して戸惑う場合も存在します。

 そのような場合においても、交付を受けた事業年度に補助金等の相当額を「特別勘定」として損金算入を行った上、返還を要しないことが確定した事業年度において、「特別勘定」の益金算入と圧縮記帳を行う事により、課税を繰り延べることができます(※2)

(※1)法人税法42条。なお、個人事業の場合、補助金等を総収入金額に算入した上で、固定資産の取得費を調整するといった計算がなされます(所得税法42条)。(※2)法人税法43条

 
【国際税務教室】 電気通信回線を介した著作物の取引と消費税 

 経済のデジタル化により、インターネット等の電気通信回線を介したデジタルコンテンツの利用も一般的です。これらにおいては、海外の事業者が配信するサービスを利用する場合も少なくありません。そのような場合、消費税の課税関係に注意が必要となります。

 消費税法上、課税対象は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」とされることから、国外取引は消費税の課税対象外の取引となります。この場合、当該取引が国内で行われたか否かの判定(以下、「内外判定」とします)は、原則的には、当該取引が資産の譲渡又は貸付の場合には、その資産の所在場所(無形資産の場合は譲渡及び貸付を行う者の住所地)により、役務の提供の場合には、役務の提供が行われた場所によりなされます。しかし、当該取引が電気通信回線を介して行われるソフトウェアの配信などといった「電気通信利用役務の提供」に該当する場合には、上記の原則とは異なり、役務の提供を受ける者の住所等により内外判定がなされます。

 インターネット等を介したデジタルコンテンツサービスにおいては、著作物(※1)を取引することも多いなか、当事者間では、どのような取引を行っているのかについての認識が曖昧であるケースも散見されます。消費税法によれば、電気通信利用役務の提供には、電気通信回線を介して行われる著作物の利用の許諾に係る取引が該当するのに対して、著作物の譲渡・貸付に付随して電気通信回線を介して行われる著作物の受け渡し等は含まれないものと解されます(※2)。電気通信回線を介して著作物の取引を行う場合には、取引内容の整理・把握が必要となります。(※1)著作権法2条1項1号に規定する著作物をいいます。(※2)消費税法2条1項8号の3。