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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 国外財産調書の提出義務(居住者判定と為替換算)

  居住者(非永住者を除く)の中で、その年の12月31日において5,000万円を超える国外財産を有する者には、翌年の6月30日までに国外財産調書を住所地の所轄税務署に提出する義務があります。実務上、提出に際して、居住者(及び非永住者)の判定や、国外財産の邦貨への換算について迷う場合が少なくありません。それらについて見れば、以下の通りです。

 居住者(及び非永住者)とは、所得税法における居住者(及び非永住者)を指しますが、その判定は、その年の12月31日の現況により判定する事とされています(※1)。したがって、例えば海外赴任をしていることにより、その年の12月31日の現況により所得税法上、非居住者とされる者には提出義務はありません(年の途中で海外赴任を終え帰国するなど、その年の12月31日の現況で居住者とされる者の場合は、提出の対象者となります)

 外国通貨で表示される国外財産の邦貨への換算は、調書を提出する者の取引金融機関が公表するその年の12月31日における最終の「対顧客直物電信買相場(TTB)(その年の12月31日に当該相場が無い場合には、当該相場のうち同日前の最も近い日の相場)を適用して換算をすることとされています(※2)。円安が継続する現状においては、国外財産の外貨建て価額に増減が無い場合においても、その年の12月31日の為替相場によっては、邦貨建ての金額が5,000万円を超過する場合も想定されます。当該制度では、調書の未提出には罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)もあることから、為替相場も踏まえた上にて、調書の提出義務についての確認が必要といえます。

(※1)国外送金等調書法5条1項、法令解釈通達5-2 (※2)国外送金等調書法施行令10条5項 法令解釈通達5-14

 
 
「定額減税」は総合経済対策になるのか

 11月2日に閣議決定(デフレ完全脱却のための総合経済対策)された「定額減税」とは、納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の減税を行うというものです。

 このような減税は、過去にも実施されたことがあり、有名なものとして、橋本内閣の「定額減税」、小渕内閣の「定率減税」があります(注1)

 1997年、橋本内閣が所得税・住民税を合算して一人あたり年間3万8000円の減税する「定額減税」を実施したが、その後政権は混乱し退陣に追いやられました。その後、小渕内閣で99年から所得税を一律20%減税する「定率減税」が実施され2007年まで続きました。

 今回、岸田内閣が減税の方針を示しましたが、国民にはあまり迎合されていないようであります。確かに、減税は国民にとってうれしいものですが、一方で防衛費や少子化対策でお金が足りないと言っている最中の減税発言に戸惑っている人も多いのかも知れません。

 毎年12月に税制改正大綱が取りまとめられますが、なぜこのタイミングで急いだのでしょうか?総合経済対策が機能し、景気への効果を期待したいものです。

(注1) 定額減税は、低所得者も高所得者も同一の3万8000円が減税となるため、低・中所得者層へのメリットがより大きく感じられます。反対に、定率減税は、減税前の所得税額の一律20%が控除されるため、高所得層の方がメリットを感じられます。また、過去に行われた所得税減税は、景気への効果が限定的だった上、選挙での敗北など政権浮揚に必ずしもつながらなかったとされている。

 
 
【国際税務教室】 駐在員事務所に係る外国税額控除

 他国に市場調査や情報収集を目的として、駐在員事務所を設置する場合も少なくありません。実務上、準備的及び補助的な活動のみをしている駐在員事務所であっても、進出国において、当該駐在員事務所が恒久的施設(以下、「PE」とします)と認定され、法人税の概算的な課税(費用総額から一定の率による利益を推定して課税をするなどの手法が一般的と言えます。このような概算的な課税について、以下、「概算課税」とします)を受ける場合も見られます。進出国においてこのような概算課税がなされた税額について、わが国において外国税額控除の適用はできるのでしょうか。

 外国税額控除の対象となる外国法人税の額には、租税条約により相手国が課すことのできる税額を超える部分は含まれないこととされています(※1)。租税条約においては、事業所得に対する課税は、PEが存在する場合に限ってなされるとする原則があります。また、租税条約においては、準備的及び補助的な活動のみ行っている駐在員事務所はPEに該当しないこととされています。したがって、わが国での外国税額控除の適用に際しては、当該駐在員事務所の活動について、日本と進出国との間の租税条約においてPEに該当するか否かについて、日本側からみた立場で判定することになります。そのような立場で検討をした結果、当該駐在員事務所がPEに該当しないとされる場合には、進出国において概算課税により課せられた税額は、租税条約により相手国が課すことのできる税額を超えるものとされ、全額が外国税額控除の対象にはならないことになります(※2)

(※1)法令142の2第8項五号(※2)当該税額は法人税の申告上、損金算入することができます(法法22条3項二号)

 
 
某芸能事務所と相続税の納税猶予(事業承継税制)

 後継者に事業を承継するにあたり、①先代の経営者から事業を引き継いだ経営者に対して一定の要件のもとに相続税・贈与税の納税を猶予し、②さらに次の後継者に承継させた場合には、これらの税金を免除する制度があり、一般的に「事業承継税制」と呼ばれています。

 この制度は、多額の贈与税や相続税が発生することで経営が圧迫され、事業の承継がうまくいかないことを解消するために平成21年(2009年)4月1日に創設されました。

 さて、ここのところ、お茶の間を賑わしている某芸能事務所問題について、経営者一族である社長が辞任をせず続投した理由が、この事業承継税制が関係していると報道されました。

 非上場の「中小企業」(注1)で一定の条件を満たせば、創業者から後継者へ自社株を相続または贈与をしたときに、本来負担すべき税金が猶予されます。某芸能事務所は、資本金が1,000万円、従業員数が210名のサービス業を行う中小企業であり、先代経営者の要件、後継者の要件などをクリアしているため、事業継続要件を満たしている間は税金が猶予されます。

 この事業継続要件とは「5年間、代表取締役であり続け、株主であり続け、かつ雇用を守り続ける」というものであるが、これに違反すれば猶予された税金を利息付きで支払わなければならなくなります。

 ちなみに某芸能事務所の後継者が納税を猶予されているとされる相続税額は800億円になるとも言われ、社長を辞任すれば、猶予の条件違反となり、全額納付しなければならなくなるため、辞任できないとも言われております。 (注1)中小企業の定義は経営承継円滑化法2条に記載。

 
 
【国際税務教室】 海外赴任時の年末調整

  コロナ禍における各種の制限が順次緩和される中、新たに海外赴任する方も見受けられます。給与所得者が、1年以上の期間にわたる辞令によって海外赴任する場合(※1)、赴任後に受給する給料は、原則として日本の国外で発生した所得(国外源泉所得)とされるため、(日本の)所得税は課税されません(※2)。したがって、年の途中で海外赴任する場合、その年の1月1日から赴任までの間に受給した給料について納めるべき税額を精算する必要が生じます。

 通常、給与の支払者は、給与所得者の税額の精算をその年の12月において、年末調整とよばれる手続きにおいて行いますが、年の途中で海外赴任する者に対しては、年末調整事務に準じて、海外赴任(出国)するまでに税額の精算手続きを行わなければなりません。その場合、扶養親族の判定などに迷う場合も少なくありません。
 扶養親族の判定(生計一及び親族関係の判定)は、赴任時の現況で判断することになりますが、配偶者控除や扶養控除が受けられるか否かの所得の判定は、赴任時にその年の年末までの所得を見積もって判断する必要があります。また、社会保険料や生命保険などの保険料控除の対象となる保険料については、赴任時までに支払った金額が対象とされるなど、通常の年末調整と異なる点があることから、注意が必要です。
 
(※1)あらかじめ1年以上にわたる期間の海外居住が予定されている者は、出国の翌日から所得税法上「非居住者」とされ、所得税の課税所得は国内源泉所得のみとなります。(※2)赴任後も継続して日本の会社から支給される給与(いわゆる「留守宅手当」)についても、原則として、国外源泉所得であることから(日本の)所得税は課税されません。