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税理士法人 成和新着情報

インボイス制度における自販機特例の落とし穴

  2023年10月よりインボイス制度が始まりましたが、わからないことばかりなのではないでしょうか?

 いわゆる自販機特例など、帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる取引(※9つの取引に限定列挙、新消令49①、新消規15条の4)については、インボイスは不要であるが帳簿に通常必要な記載事項に加え「9つのいずれかの取引に該当している旨」及び「課税仕入れの相手先の住所または所在地(一定の場合を除く。インボイス通達4-7)」を記載しなければなりません。

 例えば、公共料金の乗車券であれば、インボイス通達4-7により相手先の住所または所在地の記載は必要とされませんので、次のように帳簿に記載することになります。

 ⇒10/3 旅費交通費 510円 JR運賃、「公共交通機関特例」

 それでは自動販売機で缶コーヒーを購入した場合はどうであろうか。実は、インボイス通達4-7において自動販売機は相手先の住所または所在地を省略していいとされていないため、原則通りの記載が要求されるのですが、どこの住所を書けばよいのでしょうか?例えば名古屋駅の自動販売機なら「愛知県名古屋市中村区名駅1丁目××」とまで書かなければならないのでしょうか?「愛知県名古屋市」までで十分だといわれておりますので、帳簿の記載例は

 ⇒10/5 福利厚生費 150円 缶コーヒー「自販機特例」「愛知県名古屋」

 のように書くものと考えられます。

 
 
振込手数料は受取側が負担するという勘違い

  取引先から商品代金が振り込まれる際、振込手数料を差し引いた金額になっていることがあると思われます(これが商慣習になっている業界もあるみたいです)

 振込手数料は、合意があれば別ですが、原則は振り込む側が負担すべきものとされております(民法484条、485条「持参債務の原則」)。なので、あらかじめ合意のない場合、振込手数料を受取側に負担させる行為は「間違い」であることがわかります。
 この受取側が負担する振込手数料ですが、例えば1回880円である振込が月に100件ある場合、年間で100万円以上になります。これを、本来の振り込む側に負担を願いしたい・・・とお考えの人も多いと思いますが、新規のお客さんならまだしも、既存のお客様に対し、お願いをするのは難しいと考えられます。
 しかし、年間で数十万~数百万円の節約につながるのであれば、「税理士から交渉するように言われて・・・」という切り出しで、話をしてみるのもいいかもしれません。ただ、相手が難色を示したら、お願いはやめたほうがいいでしょう。引っ込めるタイミングを誤り、取引そのものが無くなってしまったら元も子もないからです。 
 なお、この振込手数料について、インボイス制度においても議論はありましたが、処理方法にかかわらずインボイス不要ということで決着しています。そもそも、法令に反し、支払手数料を受取側負担とするような商取引がなければ、インボイスにおいてもこの議論はなかったことでしょう。
 
 
【国際税務教室】 海外赴任者に係る源泉徴収票の作成

  海外赴任する従業員や、海外赴任を終え帰国した従業員に係る源泉徴収票を作成する場合、どこまでの給与を対象として作成するかについて、迷う場合も少なくありません。

 国内において給与の支払をする者(以下、「源泉徴収義務者」とします)には、その年中に支払の確定した給与について、給与所得の源泉徴収票(以下、「源泉徴収票」とします)の作成が義務付けられています(※1)。海外赴任する従業員には、赴任後も日本の親会社等からの給与(以下「日本払い給与」とします)が継続して支払われることが一般的といえます。源泉徴収票の作成に際して、このような日本払い給与も対象とする必要があるのでしょうか。

 源泉徴収票の作成は、居住者に対し日本国内において給与の支払をする場合に限定して義務付けされており(※1)、非居住者に対し支払う給与については義務付けされていません(※2)

 したがって、海外赴任者が非居住者に該当する場合、日本払い給与は源泉徴収票の作成の対象となりません。このことから、海外赴任により非居住者とされる従業員の源泉徴収の作成についてみれば、海外赴任をする年においては、年初から非居住者となる時(出国の時)までに支給期の到来する給与について源泉徴収票を作成し、海外赴任を終え帰国する年には、居住者となった時(帰国の時)から年末までに支給期の到来する給与について源泉徴収票を作成します。

(※1)所法226条1項 (※2)源泉徴収票の作成義務はないものの、非居住者に対して国内源泉所得に該当する給与等の支払が50万円を超える場合には、「非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を作成し、税務署に提出する必要があります(所法225条1項8号)。

 
 
【国際税務教室】 海外赴任中の在籍出向者への退職金と源泉徴収

 海外の子会社へ在籍出向している社員が、定年を迎える年齢になったことにより、日本の親会社から退職金を支給するケースもみられます。そのような場合、日本親会社の源泉徴収義務に注意が必要です。

 所得税法上、退職所得は、退職所得控除額を控除した残額の半額を課税標準とし、累進税率を平準化する必要性から他の所得と分離して課税されるなど、税負担が軽くなるように配慮されています。退職金の支払時には所得税の源泉徴収が必要となりますが、当該源泉徴収税額も、原則的にはそれら税負担が軽減された金額に即した額となります。

 しかし、非居住者に対する退職金の支払に関しては、原則的な取り扱いと異なる取り扱いとなっています。すなわち、非居住者への退職金の支払についてみれば、退職金の中の国内源泉所得とされる金額(国内勤務期間に対応する金額とされ、国外勤務期間に該当する部分は除外されます)に対して20.42%(復興特別所得税含)の源泉徴収が必要となります。

 この場合、非居住者の退職金に係る源泉徴収税額は、居住者として退職金を受け取った場合に比べて相対的に大きな金額となります。この税負担の調整を図るため、非居住者として退職金を受けた者は、自らの選択によって確定申告により居住者と同様の税額計算を行うことが認められています(以下、「退職所得の選択課税」とします)。したがって、非居住者として退職金を受けた者において、居住者として退職所得の計算を行った税額が源泉徴収税額と比較して少額となる場合には、退職所得の選択課税を行うことにより、差額分の還付を受けることができます。

 
 
転売防止、原則先払いに(免税点制度の不適切適用防止)

  令和5年5月22日、政府が訪日客の土産品に対する免税制度を抜本的に見直す検討に入ったと報道されました。以前より問題視されていた「一部の訪日客が、転売目的で免税品の大量購入をし、出国前に転売することで、免税分の利益を不正に得るという問題」に待ったをかける議論になりそうです(財務省発表によると、22年度に税関検査で徴収対象となった消費税額22億円の9割以上が徴収できていない)

 そもそも輸出物品販売所における輸出免税とは、訪日客が一般的な土産を購入する場合に限り日本の消費税を課税しない(購入しやすくする)という制度で、付加価値税を採用している諸外国においても、同様の制度が存在しています。

 わが国は、一定の要件を満たす購入であれば免税とする「免税方式」を採用しているが、欧州をはじめとする諸外国では、購入時には課税であるが、出国時に税関の承認を受け、事後に還付請求をするという「還付方式」を採用しています。

 今回の議論の方向性であるが、これまでの「免税方式」から「還付方式」へシフトする内容で、購入量が少ないなど明らかに転売目的ではない訪日客に限り、例外的に既存の「免税方式」を利用できるようにした上で、年末までに税制改正の詳細を詰め、早ければ2024年度から実施すると報じられています。

 コロナによる行動制限が廃止され、インバウンド・アウトバウンドが増えることが予想される今日において、この議論の意義は大きいものと考えられます。