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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 同性婚と所得税法、相続税法上の配偶者

  所得税法、相続税法上の配偶者は法律上の婚姻関係にある者と解されます。同性婚について、わが国では憲法(第24条「両性の合意」)の解釈上、認められないとされていますが、社会において多様性が尊重されていくなかで、法律により同性婚を認める国もみられるところです。同性婚を認める国において婚姻を挙行した場合などは、どのように扱われるのでしょうか。

 一般的に、国際的な要素を含む法律関係は、国際私法により適用すべき法律(準拠法)が決定されます。わが国においては、「法の適用に関する通則法」(以下、「通則法」とします)が国際私法として準拠法に関する一般的規定をおいています。通則法においては、「外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない」と規定しています(通則法42条)。すなわち、公序違反を理由に外国法を適用しないこととする規定であります。これにより、同性婚が外国法に基づいて有効に成立したものであっても、当該外国法の適用が排斥されるとする考え方もある一方で、欧米諸国の各国の同性婚の立法化を背景に、一概に公序違反とするべきではないという考え方もあり、立法論的な検討が必要といった指摘がなされています(※1)。また、同性婚の是非についての議論は憲法や民法を中心としたものが多いなか、新しい家族のあり方を租税法の観点からも議論することが必要といった指摘もなされています(※2)(※1)肥後治樹「租税法における『配偶者』について」筑波ロー・ジャーナル6号(2009年)180頁、187頁。(※2)加優友佳 「第1章 家族のあり方と租税」 金子宏(監)中里実=米田隆=岡村忠生(編)『現代租税法講座 第2巻 家族・社会』(日本評論社2017年)35頁。

 
似て非なる!仕入と仕入れ

 読者のなかには、簿記を勉強されている方も多いのではないでしょうか?

簿記の用語の中に「仕入」というものがありますが、これは棚卸資産である商品を購入した際に用いられる勘定科目です(世間一般的な概念とほぼ変わらないのではないでしょうか)

 しかし、消費税の世界では「仕入れ」と表記され、棚卸資産である商品の仕入のみならず、給与手当、旅費交通費、水道光熱費などの経費や、固定資産の購入代金など、幅広い支出に使われます(世間一般的な概念と大きく異なりますね)

 この「仕入れ」ですが、消費税法の条文を読むと2条(用語の定義)、30条(仕入れに係る消費税額の控除)などで、その用語が用いられています。

 一方で、国税庁HPや一般的な実務書においては、消費税法30条が(仕入税額控除)と、消費税申告書においては(控除対象仕入税額)と記載されています。

 微妙な違いに気付かれたでしょうか?

 消費税法にある「仕入れ」が正しいとしつつ、消費税計算の場面においては条文の正しい表記ではなく簡略化されているため、このような違いが見られるのです。

 余談ではありますが、税理士試験(消費税法)では、論述問題と計算問題が行われますが、論述問題において「国内において行う課税仕入れもしくは・・・」と書くべきところを送り仮名なしの「仕入」と書いてしまうと、条文を正しく理解していないと受け取られ、減点されると聞いておりますが、皆様はどのように感じられましたか?

 
 
【国際税務教室】 婚姻の成立と所得税法、相続税法上の配偶者

  日本人同士が国外でその国の法律の定めに従った婚姻の方式により婚姻を挙行したものの、夫婦別姓の選択などの理由から日本では戸籍法所定の届出をしていない場合、所得税法、相続税法上(以下、「税法上」とします)配偶者として認められないのでしょうか。

 税法上、配偶者は民法と同様に法律上の婚姻関係にある者と解されます。法律上の婚姻関係となるためには、民法に規定される婚姻の実質的成立要件(以下、「実質要件」とします)と形式的成立要件(以下、「形式要件」とします)を満たす必要があります。戸籍法所定の届出は婚姻の形式要件とされています。しかし、日本人同士が国外で行う婚姻は、国際私法により適用すべき準拠法が決定されます。(日本の国際私法である)「法の適用に関する通則法」によれば、実質要件には、各当事者の本国法であるわが国の民法が適用され、他方、形式要件には、婚姻挙行地の外国法が適用されることになります。それからすれば、民法の形式要件である戸籍法所定の届出を行っていない場合においても、日本人同士が国外でその国の法律所定の婚姻の方式に従い婚姻を挙行した場合には、形式要件を満たしているものと考えられます。そのような場合、民法に規定される実質要件を満たしている限りにおいて、婚姻は有効に成立しているといえ、そのような立場に立つ裁判例が存在します(※1)。法律上、有効に成立する婚姻である限り、税法上においても配偶者として扱われるものと考えます(※2)

(※1)東京地方裁判所 2021(令和3)年4月21日判決 (※2)戸籍法所定の届出を済ませていない状態では、婚姻関係について公証を受けられないことから、都度、局面に応じて法律上有効に成立する婚姻関係であることを主張し、証明することが必要になるものと考えます。

 
 
エヌエヌ生命に行政処分~終わらない節税保険封じ

 金融庁は2月17日、エヌエヌ生命保険(本拠地:オランダ)に対し保険業法に基づく業務改善命令を下したことは記憶に新しいでしょう。

 今回問題とされたのは「名義変更プラン」と呼ばれるもので、これは、多額の死亡保険金を受け取れる保険契約を当初法人名義で締結し高額な保険料を支払ったのちに、名義を経営者個人に変更したうえで譲渡・解約をすることで支払った保険料の大部分を経営者個人が所得税の計算上有利(通常の給与課税に比べ)な一時所得で受け取れる仕組みである。

 行き過ぎた節税を前面に出す保険商品の販売が相次ぐ中、2019年2月に国税庁が税務上の取扱いを見直す方針を示したことで、大手生命保険会社は節税商品の販売を停止した。その後に、この「名義変更プラン」が考え出され、一部の保険会社で販売が開始されたが、国税庁も黙ってはおらず、2021年6月に通達改正により実質的にこれを封じた。

 それにもかかわらず、変わらずに節税を謳った保険商品を販売していたとして、金融庁はマニュライフ生命、SOMPOひまわり生命、FWD生命、エヌエヌ生命の4社に対し立ち入り検査を実施し、特に悪質性が高いとし昨年7月にマニュライフ生命に業務改善命令が下され、今年2月のエヌエヌ生命は2例目となっている。

 以前から、保険を節税目的で販売していることに強く違和感を持っておりましたが、国税庁は法令によりこれを封じ、金融庁は立ち入り調査により処分を下すようになってきている流れのなかで、保険本来の趣旨は何だったのかを再確認するいい機会なのかもしれません。

 
 
【国際税務教室】 外国子会社合算税制における「異常所得」

  外国子会社合算税制(いわゆる タックスヘイブン対策税制)では、ペーパーカンパニーではなく実際に経済活動を行っている海外子会社(以下、「経済活動基準を満たす子会社」とします)においても、租税負担割合が20%未満の場合には、受動的所得に対する部分合算課税が適用されます。

 受動的所得とは、配当や利子、有価証券の譲渡、有形固定資産の貸付、無形資産の使用料や譲渡など、11の項目とされています(※1)。当該11項目の中には、異常所得と呼ばれている所得が含まれています。異常所得とは、当該事業年度の所得の金額から、異常所得以外のすべての受動的所得を控除した残額から、一定の金額(※2)を控除した金額とされます。

 外国子会社合算税制においては、受動的所得が2,000万円以下の場合には合算が免除されます。したがって、税負担が20%未満となる国に、経済活動基準を満たす子会社が所在しているケースにおいて、配当や利子などの受動的所得が2,000万円以下となっている場合には、合算が免除されることから、実務上、外国子会社合算税制の適用について、気に留めない場合も少なくありません。しかし、当該海外子会社が保有する不動産等を譲渡するなどして、多額の譲渡益を計上するなどした事業年度においては、異常所得について検討を行う必要があります。すなわち、多額の固定資産譲渡益などが計上されることにより、異常所得の金額が2,000万円を超える場合、当該異常所得はその他の受動的所得と合わせて、部分合算課税の対象とされることから注意が必要です。(※1)措法66条の6第6項。(※2)総資産の額として政令で定める金額に人件費その他の政令で定める費用の額を加算した金額に百分の五十を乗じて計算した金額。