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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し (令和5年度税制改正大綱)

  新型コロナウィルス感染症の影響で大きく減少した外国人旅行者ですが、水際対策の段階的な緩和に応じて急速な回復を見せています。折からの円安も背景にして、インバウンド消費による経済効果に期待が高まっています。インバウンド消費の拡充を目的とした施策のひとつに、外国人旅行者向け消費税免税制度があります。

 この制度は、外国人旅行者等の非居住者が、土産品等として国外へ持ち帰る目的で輸出物品販売場において、免税対象物品を一定の方法により購入した場合は、実質的には輸出と同質であることから、その購入に係る消費税が免除されるといったものです。

 そのような中、外国人旅行者向け消費税免税制度によって購入した物品を、ブローカーやネットなどを利用して国内転売するといった不正が問題視されていました。この点について、令和5年度税制改正大綱で課税の強化が図られています。

 具体的にみれば、免税購入された物品の税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けがされた場合には、当該物品を譲り受けた者に対して譲り渡した者と連帯してその免除された消費税を納付する義務が課されるとされています(※)

 免税購入する物品は、購入者自身が土産物等として国外に持ち帰る目的で購入し、確実に国外に持ち出す必要があることに注意が必要です。

(※)2023年(令和5年)5月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に係る税務署長の証人を受けない譲渡又は譲受けについて適用されます。

 
 
分割払いのスマートフォン代金について

  携帯料金の請求書をじっくり見られたことはありますか。

 今回は、分割購入と消費税の話をしたいと思います。スマートフォンは10万円を超えるものも珍しくないため、購入する際に分割払いを選択するケースが多いのではないでしょうか。

 例えば端末代金が12万円である場合、24回分割のときは、月々の賦払金は5,000円となり、これが通話料に合算して請求されます。この賦払金ですが、請求書をよく見ると消費税が「不課税」となっていることに気付かれると思います。これは、賦払金はローンの元本・利息の支払いであるからです。

 しかし、毎月賦払金を含めた請求額全額を課税仕入れとしているケースが実務上多いのではないでしょうか。この処理では、請求書の記載事項と消費税の取扱いは異なることになりますが、購入時に課税仕入れの処理をしていないため、あまり問題にはなっていないようです。

 しかし、インボイス開始後は、この処理は認められないと考えられます(2023年1月31日現在)。なぜなら販売会社は販売時に売上を認識しインボイスを交付することになるため、購入者はこの時点で課税仕入れを認識しなければならず、勝手に賦払金支払い時の課税仕入れとすることはできないからです。

 リース契約で使用する資産についても類似の問題がありますが、賦払時の経費とする経理処理を採用している事業所は、インボイス開始後には賦払金を課税仕入とすることができなくなるため、その手当は為されるのか、今後の議論を注視したい。

 
 
【国際税務教室】 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直し (令和5年度税制改正大綱)

  相対的に税率が低い国に設立した子会社に多くの所得を留保することによる租税回避を防止する目的の制度が、外国子会社合算税制(いわゆる タックスヘイブン対策税制―CFC税制)です。原則的には外国子会社の税負担が、「トリガー税率」と呼ばれる一定の税率より低い場合に、外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなして合算して課税を行うものです。

 現行の制度は、①ペーパーカンパニー、②事実上のキャッシュボックス、③ブラックボックス国に所在 (①②③は特定外国関係会社とされますが、以下は「ペーパーカンパニー等」とします)のいずれかに該当する場合において、税負担がトリガー税率とされる30%未満の場合には、全ての所得を合算課税対象としています。

 与党が提出をした「令和5年度税制改正大綱」では、ペーパーカンパニー等に関するトリガー税率の引き下げを行うとしています。具体的に見れば、現行の30%から27%へ引下げが行われます(※)。これにより、現在、外国子会社合算税制の対象となっているペーパーカンパニー等において、トリガー税率の引き下げにより合算課税の適用が免除されるケースも出てくるものと認識されます。

 なお、現行制度においては、ペーパーカンパニー等以外の企業には20%未満の税率による「制度適用免除基準」が適用されておりますが、こちらのトリガー税率についての改正はありません(現行のママ20%未満となります)

(※)2024年(令和6年)4月1日以後に開始する内国法人の事業年度から適用

 

 

 
中古ベンツの購入はなぜ4年落ちがいいのか

 新年あけましておめでとうございます。

 今回は、節税ノウハウ本などに書かれている「社長!中古のベンツを購入するなら4年落ちが節税になります」とはどういうことなのかを確認したいと思います。

 固定資産を購入した場合、その固定資産ごとに定められた法定耐用年数により減価償却を行う(種々特例あり)ことになりますが、中古資産の耐用年数はどう考えるのでしょうか。原則「合理的に見積もった耐用年数」によるが、その見積もりから恣意性を排除することが非常に困難であるため、実務では例外の「簡便法」によるところが多いのではないでしょうか?

 簡便法は、以下の算式で耐用年数が計算します(最低2年、1年未満の端数は切り捨て)

 a.法定耐用年数の全部を経過…法定耐用年数×0.2

 b.法定耐用年数の一部を経過…法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2

 これら算式により耐用年数が2年と計算されれば、200%定率法の場合、償却率は1.000なので、1月取得であれば、月数按分12/12となり、1年で購入金額の全額が経費となります(もし12月取得であれば月数按分1/12となります)。普通自動車の法定耐用年数は6年なので、上記算式により経過年数が3年6月超であれば耐用年数が最短の2年となります。

 よって冒頭に記載した4年は年数的には正しいといえます。ただ、その事業において中古のベンツがなぜ必要なのかを説明できなければ、個人で使用するベンツと認定される可能性もあるため、過度な節税と思われる行為には注意が必要です。

 
 
【国際税務教室】 租税条約における学生・事業実習生等

  租税条約では、学生(student)や事業実習生(business apprentices)(※)の活動を保護するため、これらの者が受けとる所得や給付について、滞在地国で免税とする規定が存在します。

 各国の租税条約のひな型の一つとされるOECDモデル租税条約において、免税の適用要件についてみれば、①専ら教育又は訓練を受けるために滞在する学生又は事業実習生であること、②当該者が、現に相手国の居住者である場合又は滞在地国を訪れる直前に相手国の居住者であった場合であること、③当該給付が、生計、教育又は訓練のために受領する給付であること、④当該給付が滞在地国以外から支払われる場合に限ること、の四つとされています。この場合、滞在地国で支払われる給付は、上記の要件を満たさないことから免税とはなりません。

 我が国が締結をした租税条約についてみれば、先進国との条約ではOECDモデル租税条約と同様の条項となっているのに対し、開発途上国等との条約では、教育又は訓練に関連して、滞在地国で役務提供をしたことにより得た所得についても、滞在地国で免税とするといった条約もあるなど、免税の範囲が相対的に広くとられている場合があります。その場合、すべてを免税とする条約もあれば、一定の限度額を設けて免税とする条約もあるなど、免税に関する取扱いが細かく規定されているケースが多く存在します。したがって、実際に学生・事業実習生について、租税条約による免税の適用を受ける場合には、それぞれの条約の規定を確認する必要が生じます。(※)租税条約上は「学生」及び「事業実習生」の定義はおかれていないことから、条約を適用する締約国の国内法により解釈を行うことになります。