経済活動の国際化に伴い、海外出張を繰り返す者も多くみられます。その場合、原則的には出張期間に対応する給与は出張先の国においても課税所得とされますが、免税措置を受けられる場合もあります。このような免税措置は租税条約によるもので「短期滞在者免税」と呼ばれています。免税措置を受けるためには、条約に規定される一定の条件を満たす必要があり、その条件の一つに、183日以下の滞在といった、いわゆる「183日ルール」が存在します(※1)。実務上、この「183日」の計算の仕方について迷う場合が少なくありません。
世界各国で締結される租税条約は先進国間の「OECD条約モデル」と先進国と開発途上国間の「国連条約モデル」をひな形として作成される傾向があります。「183日」の計算の仕方についてみれば、「OECD条約モデル」では「当該課税年度(暦年)に開始又は終了するいずれの12箇月の期間」(入国または出国から連続する12ヶ月間)において計算されるのに対して、「国連条約モデル」では「当該課税年度(暦年)」において計算されることとされています。
例えば、日米租税条約では「OECD条約モデル」型とされているのに対して、日中租税条約では「国連条約モデル」型となっています。このように、条約により183日の計算の仕方に相違があることに留意し、「短期滞在者免税」の適用を検討することが必要となります。
(※1)通常、その他の条件として、支払者基準(給料が勤務地国の企業等から支払われていないこと)、負担基準(給料が勤務地国の駐在員事務所等で負担されていないこと)が存在します。