国際的に活躍をする者の給与には、日本と勤務地国が重なり合って課税を行うといった国際的二重課税が発生するケースが想定されます。国際的二重課税は租税条約により調整が図られています(※1)。給与所得の場合、原則として勤務地国での課税を認めつつも、例外的に勤務地国の滞在が一定期間内の場合等の条件を満たす場合には、勤務地国での課税を免除すると規定されており、一般的に短期滞在者免税(いわゆる「183日ルール」)とよばれています。
留意すべきことは、免税の適用は条約に規定される条件の全てを満たす必要があり、条件は滞在日数基準(通常183日以下)以外も存在するということです。例えば日中租税条約の場合、①滞在日数基準(暦年の勤務地国の滞在日数が183日以下)の条件の他に、②支払者基準(給料が勤務地国の企業等から支払われていないこと)、③負担基準(給料が勤務地国の駐在員事務所等(※2)で負担されていないこと)の条件が存在します(※3)。また、租税条約によるこの免税措置は非居住地国の課税を免除するものであることから、勤務地が居住地国とされる場合には、(仮に条約に規定される全ての条件を満たすとしても)勤務地国での課税が免除されるものではありません。
一般的に、183日以下での滞在であれば自動的に免税とされるといった誤解も多い短期滞在者免税ですが、適正な納税と後のトラブル防止のためにも正しい理解が必要です。
(※1)日本は平成23年10月末現在 63カ国・地域と租税条約を締結しています。
(※2) これらを租税条約では恒久的施設(PE-Permanent Establishment)とよんでいます。
(※3)日中租税条約第15条