■1■外国税額控除制度の改正
控除限度額の計算について、租税条約の規定により条約相手国等に租税を課することができることとされる所得(その租税条約の規定において控除限度額の計算に当たって考慮しないものとされるものを除きます。)で、その条約相手国等において外国所得が課されるものについては、国外所得に該当するものとされました。
■2■事例
日本法人の役員(日本居住者)が租税条約を締結している海外子会社に出張した場合の役員報酬の取扱いが、よくあるパターンとして挙げられます。
(1)従来
この役員(日本居住者)の海外勤務に起因する対価は、国内法上はこれまで「国内源泉所得」とされていたため、外国で課税されても外国税額控除の対象とならず、その適用を受けることができませんでした。そのため、海外子会社所在地と日本において「給与所得の二重課税」が生じていました。
(2)平成23年分の所得から改正
今回の改正では、外国税額控除における控除限度額の計算で、租税条約上課税権を認めた所得は「国外所得」に該当するとの措置を講じました。このため、この役員の海外勤務に起因する対価は、国外所得に該当すると認められる余地ができたことになり、外国税額控除の対象となり得ます。
平成23年度の所得から適用されます。
■3■改正の意義
今回の改正により、
①アメリカやイギリスとの租税条約で既に導入されている「租税条約上課税権を認めた所得は国外所得とみなす」規程が、国内法上も整備されました。
②これら以外の条約締結国との間での外国税額控除の適用の範囲が広まり、居住者について生じた二重課税の問題の解消に繋がることとなりました。
■参考■ 外国税額控除制度の改正項目の実現状況
「平成23年度税制改正大綱」に明記された外国税額控除
①当初申告要件の廃止および控除額限度の見直し
⇒ 国会 審議中
⇒ 国会 審議中
②外国税額控除の適正化を図る観点からの見直し
⇒ 国会 審議中
⇒ 国会 審議中
③外国法人税の範囲の見直し
⇒ 平成23年6月30日 改正
⇒ 平成23年6月30日 改正
④控除限度額の計算に係る国外所得の範囲の見直し
⇒ 平成23年6月30日 改正
⇒ 平成23年6月30日 改正