毎年の税制改正の議論の実質的なスタートといえる、各省庁の税制改正要望が固まり公表されています。
金融庁からの金融所得の損益通算の拡大や、 経済産業省からの企業グループ内における配当の益金不算入制度の導入など、注目される要望もありますが、 新聞等の論調によれば、各省庁の本年度の要望は衆院選を控え小粒となっているとされております。 その原因は、民主党政権下では従来までの税制改正プロセスが大きく変わる可能性があり、 各省庁の要望がどの程度まで税制改正に反映されるかが未知数といえることにあるとされております。
それでは、今までの税制改正プロセスと民主党が考えるプロセスはどのように違うのでしょうか?
従来の税制改正プロセスでは、毎年夏に提出される各省庁の税制改正要望を受けて、11月頃に 政府税制調査会から首相に答申が出され、それとは別に12月中旬頃に与党の税制調査会が大綱を取り纏めて これらを基に翌年1月頃に政府が「税制改正要綱」を閣議決定するといった手続きによって行われております。
これらの中で中心的にな役目を果たしているのは与党の税制調査会であり、 実質的にはそこで税制改正の方向性が決定されるともいわれております。
一方、「民主党税制改正抜本改革アクションプログラム」によれば、 与党の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする政府税制調査会を設置、 現状のような権力の二重構造ではなく、政府税制調査会によって政策決定の過程を透明化するとされています。
衆院選後、どの党が与党となろうとも、年末までには税制改正大綱はまとめられるものと考えます。
税制においては各個別の税制改正項目が注目を集めます。 当然にそれらは生活に直結することから重要といえますが、 このような税制改正の手続やそれら機関の中でどのような議論がなされるのかといった 面にも注目をする必要があるものと考えます。