所得税法上、海外勤務等により非居住者とされる者においても、日本国内で生じた所得は課税の対象となります。所得税法においては、課税の方式として、自ら申告と納税を行う申告納税方式と源泉徴収のみで課税関係が完結する源泉分離課税方式が採用されています。非居住者の課税方式は一般的に源泉分離課税方式とされますが、非居住者が不動産の貸付を行っている場合など、一定の場合には源泉分離課税ではなく申告納税方式によるものとされます。申告納税方式による場合には、非居住者であっても確定申告を行うことが必要となります。その場合、適用を受ける所得控除について迷う場合も少なくありません。
非居住者が確定申告をする場合に適用ができる所得控除は、雑損控除(国内にある資産について生じた損失のみが対象とされます)、寄付金控除、基礎控除の三つに限定されています。しかし、非居住者のなかには年の途中で海外赴任をするなど、一年間の中に居住者期間と非居住者期間との両方を有する者もみられます。そのような非居住者の確定申告は、居住者の期間に生じた所得と非居住者の期間に生じた所得を合計して行うことになります(※)が、その場合には、居住者の期間に支払った医療費や社会保険料、生命保険料等の居住者期間の所得控除の額が控除の対象となります。また、扶養控除等の人的控除については、「納税管理人の届け出」を提出している場合にはその年の12月31日の現況で、届け出の提出がない場合には非居住者となった時の現況により判定をすることになります。
(※)非居住者となるまでの間に生じた所得についての確定申告の提出期限は、「納税管理人の届け出」の提出の有無により異なります。