歴史的とされる円安を背景に、外貨建て資産の譲渡が多くみられます。外貨預金を解約して円で払い出すといった取引が代表例といえます。その場合、所得税法の適用において、預入時と解約時の為替レートによる円換算額の差額(以下、「為替差損益」とします)は、実務上、雑所得として取り扱われていることが一般的です(※1)。他方、外国株式や外国公社債などの外貨建資産の譲渡を行う場合は、どのように取り扱われるのでしょうか。これらを譲渡した場合には、①資産そのものの譲渡損益と、②当該資産の取得時と譲渡時の為替差損益の二つの損益が認識できます。所得税法上、②は①と区別して雑所得として認識する必要があるのでしょうか。
所得金額の計算は、円貨で行うことが前提とされていることから、所得税法においては、外国通貨で支払いが行われる資産の販売及び購入等を外貨建取引とし、居住者が外貨建取引を行った場合には、外貨建取引を行ったときにおける外国為替の売買相場により換算した金額により所得計算をするとされています(※2)。したがって、外国株式や外国公社債を譲渡した場合の所得計算は、取引を行った時点の外国為替売買相場により円換算を行った上で行うことになります。これにより、資産の取得時と譲渡時の為替差損益は、譲渡所得に含まれることになります(※3)。すなわち、所得税法上、外国株式や外国公社債の譲渡を行った場合には、①譲渡損益と②為替差損益を区別して認識する必要はありません。
(※1)譲渡所得に該当するという意見もあります。(※2)所法57の3条1項 (※3)申告分離課税(20.315%)となります。