我が国の国際収支(※1)によると、2010年度における海外子会社からの受取配当は、資源・自動車関連子会社からの受取配当が中心となり3.12兆円とされています。新聞報道等(※2)では当該受取配当金額は海外子会社が計上した利益の95%に相当するとのことで、利益のほとんどを日本親会社に還流させており、これには2009年4月より実施された受取配当を非課税(益金不算入)とする税制改正が寄与しているともみられています。
2009年4月の税制改正前には、海外子会社からの受取配当は法人税の課税対象となる益金とされ、その上で進出国にて課税された税額を我が国の法人税から控除するという外国税額控除方式が採用されていました。これにかえて2009年4月の税制改正により、受取配当金の95%(※3)を益金不算入すなわち非課税とする制度がスタートしています。この取扱いは無条件に適用されるものではなく、次のような要件を満たす必要があり注意が必要です。
①出資比率が25%以上であること
②海外子会社からの配当金に関する明細書の添付、保存があること
2009年4月の税制改正によりスタートした新制度が旧制度に比べて税負担の上で有利に働くか否かはケース・バイ・ケースですが、旧制度で必要とされた複雑な手続が新制度では簡素化されたことが利点といえ、この点が海外子会社からの利益配当が増えている要因の一つといえます。
(※1) 日本銀行局「2010年の国際収支(速報)動向」
(※2) 日本経済新聞 2011年7月19日 朝刊
(※3) 受取配当金の5%は益金に算入され、法人税の課税所得となります。