コロナ禍における各種の制限が順次緩和される中、新たに海外赴任する方も見受けられます。給与所得者が、1年以上の期間にわたる辞令によって海外赴任する場合(※1)、赴任後に受給する給料は、原則として日本の国外で発生した所得(国外源泉所得)とされるため、(日本の)所得税は課税されません(※2)。したがって、年の途中で海外赴任する場合、その年の1月1日から赴任までの間に受給した給料について納めるべき税額を精算する必要が生じます。
通常、給与の支払者は、給与所得者の税額の精算をその年の12月において、年末調整とよばれる手続きにおいて行いますが、年の途中で海外赴任する者に対しては、年末調整事務に準じて、海外赴任(出国)するまでに税額の精算手続きを行わなければなりません。その場合、扶養親族の判定などに迷う場合も少なくありません。
扶養親族の判定(生計一及び親族関係の判定)は、赴任時の現況で判断することになりますが、配偶者控除や扶養控除が受けられるか否かの所得の判定は、赴任時にその年の年末までの所得を見積もって判断する必要があります。また、社会保険料や生命保険などの保険料控除の対象となる保険料については、赴任時までに支払った金額が対象とされるなど、通常の年末調整と異なる点があることから、注意が必要です。
(※1)あらかじめ1年以上にわたる期間の海外居住が予定されている者は、出国の翌日から所得税法上「非居住者」とされ、所得税の課税所得は国内源泉所得のみとなります。(※2)赴任後も継続して日本の会社から支給される給与(いわゆる「留守宅手当」)についても、原則として、国外源泉所得であることから(日本の)所得税は課税されません。