「ヒト・モノ・カネ」が国境を越え頻繁に移動すると、一つの所得に対して複数の国が重なり合って課税を行う場合が想定されます。
このような国際的な二重課税は国際的経済活動の障壁となります。各国は国内法の規定によりこの障壁の除去に取り組んでいます(※1)が、それのみでは国際的二重課税が完全に除去がなされないことが少なくありません。したがって、各国は国家間の協力を図ることをもって二重課税の調整を実現すべく、二国間で租税に関する協定を締結しています(※2)。この協定が「租税条約」とよばれるもので、日本も61カ国・地域と租税条約を締結しています(※3)。
租税条約では、二重課税が発生する所得について非居住地国での課税を免除もしくは制限することにより二重課税の調整を行います。通常、租税条約の規定は国内法の規定に優先して適用されることになります。したがって、国境を越えた経済活動を行う場合には、日本と進出国のそれぞれの国内法の取り扱いはもとより、両国間で租税条約が締結されている場合には、租税条約の規定の取り扱いを確認する必要があります。その上で、それぞれの国でどのように課税がなされ、租税条約により当該課税が免除(もしくは制限)されるか否かについて把握することが重要となります。
(※1)日本の国内法による国際的二重課税の調整は「外国税額控除方式」が採用されています。
(※2)租税条約の目的は脱税、租税回避への対応もその目的とされます。
(※3)平成23年9月1日現在