後継者に事業を承継するにあたり、①先代の経営者から事業を引き継いだ経営者に対して一定の要件のもとに相続税・贈与税の納税を猶予し、②さらに次の後継者に承継させた場合には、これらの税金を免除する制度があり、一般的に「事業承継税制」と呼ばれています。
この制度は、多額の贈与税や相続税が発生することで経営が圧迫され、事業の承継がうまくいかないことを解消するために平成21年(2009年)4月1日に創設されました。
さて、ここのところ、お茶の間を賑わしている某芸能事務所問題について、経営者一族である社長が辞任をせず続投した理由が、この事業承継税制が関係していると報道されました。
非上場の「中小企業」(注1)で一定の条件を満たせば、創業者から後継者へ自社株を相続または贈与をしたときに、本来負担すべき税金が猶予されます。某芸能事務所は、資本金が1,000万円、従業員数が210名のサービス業を行う中小企業であり、先代経営者の要件、後継者の要件などをクリアしているため、事業継続要件を満たしている間は税金が猶予されます。
この事業継続要件とは「5年間、代表取締役であり続け、株主であり続け、かつ雇用を守り続ける」というものであるが、これに違反すれば猶予された税金を利息付きで支払わなければならなくなります。
ちなみに某芸能事務所の後継者が納税を猶予されているとされる相続税額は800億円になるとも言われ、社長を辞任すれば、猶予の条件違反となり、全額納付しなければならなくなるため、辞任できないとも言われております。 (注1)中小企業の定義は経営承継円滑化法2条に記載。