所得税法上、「居住者」は全世界所得について納税義務を負う(※1)のに対して、「非居住者」は国内で発生した所得についてのみ納税義務を負います。したがって、所得税法の取扱いについて考える場合、「居住者」及び「非居住者」への該当性は重要なポイントとなります。
「居住者」と「非居住者」は、国内における「住所」(又は「居所」)の有無によって判断されます(※2)。所得税法には「住所」の定義はおかれておりませんが、民法(※3)の借用概念として「生活の本拠」を指すものとされています。その判定は、①住居、②滞在日数、③職業、④国内において生計を一にする配偶者その他の親族の有無、⑤資産の所在といった、その者をとりまく客観的事実を総合して検討するとされています。
このように「住所」の判定は画一的でないことから、判断に困惑する場合も想定されます。そのため、所得税法施行令、所得税基本通達において、「住所」の有無についての事実を推定する規定がおかれています(※4)。それらにおいて、国外に居住することとなった個人についてみれば、国外において継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、国内に住所を有しない者(=非居住者)と(推定すると)されています。しかし、当該推定規定は、事実が直接証明される場合には適用されないことに注意が必要です。したがって、海外で一定の職業についている場合においても日本と海外を行き来するなどしている者についての判定は、推計規定ではなく、原則とされる「生活の本拠」の有無によりなされることになります。
(※1) 居住者のうち非永住者を除く(※2) 所得税法2条 (※3)民法22条 (※4)所得税法施行令14条、15条、所得税基本通達2-1