経済発展を背景としてインド法人との取引も散見されます。インド法人との取引に際しては、税務上注意を払う点があります。
日印租税条約によれば、「技術上の役務に対する料金」(※1)(以下、「当該役務提供対価」とします)も使用料と同様に扱われます。そして、当該役務提供対価に対する課税は、役務を提供する側の国だけではなく、所得が生じる国においても課税できるとした上で、所得が生じる場所については「支払者の居住地国」としています(※2)。すなわち、所得の源泉地について「債務者基準」を採用しています。
他方、日本の国内法(※3)では、当該役務提供対価の源泉は役務の提供地にあるとする役務提供地基準が採用されています。このように、ソースルール(所得の源泉地を定める法規則)が租税条約と国内法により異なることがあります。そのような場合、所得税法162条及び法人税法139条が、国内源泉所得につき「租税条約において国内法の規定と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる」と規定(源泉置換)していることから、国内法のソースルールが租税条約のソースルールに置き換わることにより課税されることになります。すなわち、日本の居住者がインド法人に当該役務提供対価を支払う場合には、役務の提供がインド国内で行われているとしても、国内源泉所得として源泉徴収が必要となることから注意が必要です。
(※1)技術者その他の人員によって提供される役務を含む経済的もしくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務の対価としてのすべての支払金(※2)日印租税条約12条1項、2項、6項(※3)所法161条6項、法法138条4項