新年度開始に際して、新たに海外赴任する方も多く見受けられます。一般にサラリーマンとよばれる給与所得者が、1年以上の期間にわたる辞令により海外赴任する場合(※1)、赴任後に受給する給料は原則として日本の国外で発生した所得(国外源泉所得)とされるため、日本の所得税は課税されません(※2)。したがって、年の途中で海外赴任する場合には、その年の1月1日から赴任までの間に受給した給料について納めるべき
税額を精算する必要が生じます。
通常、給与所得者の税額精算事務は、給与の支払者によりその年の12月において年末調整とよばれる手続にて実施されます。しかし、年の途中で海外赴任する場合には、給与の支払者は海外赴任者が赴任するまでに、12月に行われる年末調整に準じて税額の精算手続きを行わなければなりません。この場合、扶養親族の判定は赴任時の現況で判断することになりますが、配偶者控除や扶養控除が受けられるか否かの所得の判定は、赴任時にその年の年末までの所得を見積もって判断をする必要があります。また、控除対象となる保険料については赴任時までに支払った金額が対象とされるなど、通常の年末調整と異なる点もあり注意が必要です。
(※1)あらかじめ1年以上にわたる期間の海外居住が予定されている者は、出国の翌日から所得税法上「非居住者」とされ、所得税の課税所得は日本の国内源泉所得のみとなります。
(※2)給与が日本の会社から留守宅に支払われる、いわゆる「留守宅手当」についても日本の所得税は課税されません。