給与所得者が1年以上の期間の辞令により海外赴任する場合、赴任後の給料は、原則として、日本で支給されるものも含めて日本国外で発生した所得となり、日本の所得税は課税されません。一方、海外赴任者に例えば不動産の貸付等といった日本国内で発生する所得が存在する場合、当該所得は海外赴任後も日本の所得税の課税対象となります。したがって、海外赴任者は日本出国後も確定申告を行う必要が生じます(※1)。この場合、海外赴任者は自らに代わって確定申告書の提出や税金の納付を行う「納税管理人」を選任しなくてはなりません(※2)。
「納税管理人」は日本に住んでいる人であれば誰でもなることができ(※3)、海外赴任者の納税地を管轄する税務署に「納税管理人の届出書」を提出することにより選任をします。
このように、確定申告が必要な所得が存在する海外赴任者は、赴任に際して「納税管理人」を選任をしなければなりませんが、納税管理人の選任をせず海外赴任をしたとしても、その事をもって何らかの罰則を受けるという事はありません。しかし、海外赴任に際して、納税管理人を選任した場合と選任しない場合とでは、確定申告期限が相違することもあり、期限後申告には加算税等が課されることから、確定申告期限については注意が必要です。
(※1)その他に、海外赴任する年の1月1日から赴任までに給与以外の一定の所得が存在する場合にも、確定申告が必要となります。(※2) 国税通則法117条 (※3) 納税管理人には個人だけではなく法人も選任することができます。