日本親会社の人員が海外子会社を支援する例は多く、中には親会社の取締役等の役員が赴任するケースも見られます。その場合、赴任する役員の役員報酬に対する所得税の課税について、多くのご質問を頂きます。
日本の所得税法では「居住者」と「非居住者」の課税範囲が異なります。「居住者」が全世界の所得に対して課税を受けるのに対して、「非居住者」は日本国内で発生した所得についてのみ課税を受けます(※1)。仮に、赴任する役員の海外勤務が1年以上予定されている場合には「非居住者」となり、日本の国外で発生した所得(以下、「日本国外源泉所得」とします。)については日本の所得税は課税されないことになります。
ただし、国外にて勤務する場合の使用人給与が、給与支払者の所在地と無関係に日本国外源泉所得とされるのに対して、日本の法人から受け取る役員報酬は、原則的には勤務地と無関係に日本の国内で発生した所得とされます。したがって、非居住者とされる役員に日本の法人が支給する役員報酬は、当該役員の勤務がどこで行われていようとも日本の所得税の課税所得とされ、支払額の20%の税率による源泉徴収が必要となります(※2)。
(※1)「居住者」・「非居住者」の詳細は本稿2011年12月号をご参照ください。
(※2)例外的に、役員が当該法人の使用人として常時勤務している場合には、使用人と同様に取り扱われます。