給与所得者が1年以上の期間にわたって海外赴任する場合、赴任後の期間に対応する給料は、日本で支給されるものであっても日本国外で発生した所得とされ、日本の所得税は課税されません(※1)。したがって、海外赴任者の赴任後の給料からは所得税の源泉徴収がなされないのが一般的です。一方、個人住民税の取り扱いはこれとは異なります。
個人住民税とは都道府県民税と市町村民税から構成されており、納税義務者はその年の1月1日にその地方団体内に生活の本拠を有する個人とされます。また、個人住民税の税額計算は、前年の所得を基礎(課税標準)として計算がなされます。
通常、1年以上の期間にわたって海外赴任する間の生活の本拠は赴任地である海外となります。しかし、一年の途中で海外赴任する場合、赴任する年の1月1日における生活の本拠は国内にあることから、海外赴任する年については赴任する年の前年の所得を基礎として、海外赴任した事とは無関係に税額の計算が行われます。海外赴任の翌年からは、その年の1月1日において生活の本拠が海外に移っている事をもって、個人住民税は課税されないことになります。このように、海外赴任する者の個人住民税の取扱いについては、所得税の取扱いと異なり、赴任の時期が1月1日の前後によってその年の課税関係がかわることになります。
(※1)赴任後に支給を受ける給料であっても赴任前の期間に対応する給料は、原則的に日本国内源泉所得として所得税の課税所得とされます。この場合、総支給額の20%の源泉徴収がなされます。