日本企業が海外で所得を得る場合、この所得は、日本の法人税だけでなく、所得が発生した国(以下、「源泉地国」とします)においても課税される場合が想定できます。このような国際的二重課税は経済発展の妨げともなることから、各国は国内法において、その排除を目的とした規定を設けています。日本の場合、内国法人(※1)には全世界の所得について課税を行った上にて、源泉地国で納めた税金を日本の法人税から控除するといった「全世界所得課税+外国税額控除」方式が採用されています。
外国税額控除の対象とされる税は海外で納付済みの全ての税額ではなく、法人の所得に対して課される税とされます(※2)が、実際に外国税額控除の適用を行う場合に、控除の対象となる外国の税の範囲について戸惑う場合が少なくありません。
対象となる外国税額の範囲は法令により規定されている(※3)ものの、概念的な規定となっており、したがって、実際に控除を行う場合には納税者自らが判断を行う必要が生じます。すなわち、外国税額控除の適用に際しては、外国で納付済みの全ての税額が無条件で対象となるのではないことを認識し、当該規定の意義を理解した上にて、控除対象の税に該当するか否か、外国で課される税の法的根拠を調べ、個別具体的に判断を行うことが必要といえます。
(※1)日本国内に本店所在地がある法人を指します。 (※2)法人税法施行令第141条第1項 (※3)法人税法施行令第141条第2項