海外赴任している給与所得者が、定期的な人事異動や海外拠点の統廃合などによって、日本親会社へ帰任する場合も多くみられます。その場合、日本親会社へ帰任する給与所得者の帰国後の給与における所得税の取り扱いについて迷う場合が少なくありません。
一般的に1年以上の予定にて海外の子会社等へ出向している給与所得者は所得税法上非居住者とされ、当該給与所得者の給与は赴任先の海外拠点から支給されるものだけではなく、日本親会社から支給されるものであっても、海外勤務に基づき支給されるものについては、国外源泉所得として所得税の課税対象とされません。したがって、このような者に対して日本親会社が支給する給与は源泉徴収の対象とされません。
しかし、当該給与所得者が日本へ帰国する場合、帰国後の給与所得者は所得税法上の居住者に該当することから、全世界の所得について所得税の納税義務を負うこととなります。したがって、帰国後、日本親会社から支給される給与に、日本親会社への帰任前の海外勤務に基づき支給されるもの(国外源泉所得)が含まれていたとしても、それらも含めたすべてが所得税の課税対象とされます。具体的には、帰国した給与所得者に支給される給与については、当該給与所得者の帰国日と支給される給与の締日との関係を何ら考慮に入れる必要はなく、支給額の全額を対象として源泉徴収が必要となります(※)。
(※)通常、日本親会社へ帰任する給与所得者は帰国後の最初の給与の支給日の前日までに「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出をすることになります。