海外勤務者が定期的な人事異動等によって日本へ帰国するケースも多くみられます。その場合、帰国後の所得税の取り扱いについて認識不足となっている例が少なからず見受けられます。
海外勤務の任を解かれ日本に帰国した者は、所得税法上、居住者となります(※1)。所得税法上、居住者の課税所得の範囲は「すべての所得」(※2)とされています。「すべての所得」とは、所得の発生地(以下、「所得源泉地」とする)がどこであっても課税所得とされることを意味しており、一般的に「全世界所得課税」とも呼ばれています。したがって、海外勤務から帰国して居住者となった以降は、給与所得はもとより、その他の所得についても(海外赴任をしていた国など)日本国外が所得源泉地であったとしても課税所得となります。
たとえば、海外勤務をしていた国の金融機関に預け入れをしている預金について、帰国に際して払い戻しをせずそのまま帰国をした場合、帰国後も当該預金の利子の支払いを受けることになります。この場合、全世界所得課税を受ける居住者の場合、国外払いの預金利子も課税の対象とされることから、利子所得として確定申告をする必要が生じます(※3)。
海外勤務から帰国した場合、全世界所得課税を受ける居住者になったことを正しく認識し、給与所得以外の所得についても適正な申告がなされるよう留意が必要です。
(※1)具体的にいえば、居住者となる日は入国日の翌日となります(所得税法基本通達2-4)(※2)所得税法7条
(※3)国内において支払われる預金利子については、源泉分離課税の対象とされており確定申告の必要は生じません。