現地法人から日本親会社への帰任に際して、赴任先国の社会保険制度による脱退一時金の支給を受けることがあります。この場合、日本の税務上どのように取り扱われるのでしょうか。
所得税法上、赴任先国の社会保険制度が日本の国民年金法や厚生年金保険法等に類するものであり、海外赴任者を被保険者として退職により支給されるものであれば、このような一時金は退職所得とみなされます(※1)。当該所得は海外赴任者が所得税法上非居住者とされる(海外の現地法人へ出向している)間の勤務を基因として取得するものであることから国外所得となります。
所得税法上、出向中の海外赴任者は非居住者とされ、日本への帰国後からは居住者(永住者)とされることが一般的といえます。その場合の課税所得の範囲をみれば、非居住者の間に生じる所得については国内源泉所得のみとされますが、居住者(永住者)に該当する期間に生じる所得については全世界所得となります。
実務的に退職所得とみなす一時金の所得の生じる時期は、当該一時金の支給の基礎となる法令等により定められた給付事由の生じた日とされています(※2)。したがって、支給される一時金の基礎となる法令等による給付事由の生じる日が赴任者の帰国後となる場合には、居住者(永住者)の国外所得として所得税の課税所得となります(※3)。
(※1)所法31三、所令72③八(※2)所基通36-10(※3)退職所得の計算に際しては、退職所得控除額を控除することができます。したがって、受給する一時金が退職所得控除額を超過しなければ所得税額は発生しません。